彼とバーで別れを告げ、さっきまでのやりとりを思い出して、その余韻に浸りながら家路を辿る。
いつもと同じバーに寄って、いつもと同じお酒を飲んでいたのは変わらない。
ただ、隣に彼が居ただけ。
ただそれだけの事なのに、今日は心がとても軽い。少女の頃のように、胸が少し踊っている。

我ながら単純だなと思った。
話し相手が居て、私の話を聞いて貰って会話をする事がこんなに楽しい時間だったことを思い出させられ、次の金曜日が待ち遠しくなる。

「今までの私だったら、次が待ち遠しい曜日なんか無かったのに。」

金曜日はもちろん仕事を始めてから好きだ。
職場に居なくて済むから。変に気を使わずに済むから。疲れないから。

けれど、今回はそう言った週末の楽しみではなく、「金曜日」が楽しみだった。


名前も、年齢も結局聞けなかったあの彼に、惹かれてしまった。
彼によって、私の金曜日は特別なものへと変わった。

早く、早く時間が早く進んで、すぐに金曜日になればいいのに。