「ねぇ、最後の一杯飲まない?」

名前は聞けなかったが、諭されたのを飲みこみ彼と前回のように他愛のない話をしていた。彼は話が自分のターンになってもするりと話を変えてしまい、結局全然知ることが出来なかった。
なので基本的には私の話ばかり引き出されて聞いてもらうような会話になってしまった。

「うん、いいよ。時間もいい時間だしね。」

「じゃあ、最後は僕が選んだのを飲んでほしいんだけど…いいかな?」

「うん、いいよ?君の方がカクテルに詳しいと思うから、おすすめ飲んでみたい。」

「ありがとう。じゃあ、すみません。グランドスラムと、モーニンググローリーフィズをひとつずつお願いします。」

「私のは、どっち?」

「んー、僕から渡すって意味で、モーニンググローリーフィズかな?」

彼は妖艶な笑みを浮かべて、そういった。

「…それは、カクテル言葉って意味?」

「うん。どんな意味か、知りたい?」

私は、緊張しながらもうなずいた。
そうすると彼は、くすっと笑い、私に耳打ちした。

「貴方と明日を迎えたい。」

またしても私の時間が止まった。
明日を、迎えたい…?それは、そういう意味と捉えてもいいんだろうか。
一瞬にして顔が真っ赤になっていくのが自分でもわかる。顔が熱くて仕方がない。

「意味、伝わったみたいだね。答え、聞いてもいい?」

私は、何も言わずに、静かにゆっくりとうなずいた。