そうして僕たちは段々趣味の話を通していろいろな話をするようになっていった。裕介と話すことはどれも僕が今まで触れてきていなかったキラキラした話ばかりで、うらやましいと思う反面、裕介が体験していると想像することは容易いものばかりで面白かった。でも、そんな楽しい話を聞いているとき、ふいに心に靄のようなものがかかる瞬間も増えていった。
 その感情の名前を知るのに、そう時間はかからなかった。僕は、裕介のことを好きになっていた。こんな僕にもまぶしすぎるほどの笑顔を見せ、沢山の話をして僕を知ろうとしてくれている裕介のことを。

 でも、それを伝えようとは思わなかった。だって、恋人になんてなれるわけでもなくて負け確定だから。だから、今のこの関係で十分。そう思っていたのに。

「彰、俺と付き合わない?」

「…は?お前、今なんて?」

「だから、俺と付き合わない?って言ったの。恋人にならないー?って。」

 正直、頭の中が一瞬で何も考えられなくなった。だって、裕介が僕のことを好き?そんなことがあるわけない。何かの冗談に決まってる。

「お、お前、流石にそういう冗談は良くないと思うんだけど。趣味悪いからやめた方がいい。」

「俺本気で言ってんだけど。…これだけ一緒に居たら、声のトーンとか、表情でマジなの、伝わんない?」

 そういわれて裕介の顔を見ると、やけに真剣な眼差しで僕を見つめ、その頬は少しばかり赤らんでいるようにも見えた。

あ、これ、本気のやつだ…。

 さすがの僕にも、それが伝わってきた。だから、僕も真剣に答えなくちゃならない。

「…いいよ。」

「え…?」

「だ、だから!恋人、お前の恋人、なるよ…。」

 これがその時僕に言えた最大限の答えだった。そのあとはもちろんいつものごとく、いや、今回はそれ以上の笑顔をこちらに見せていた。その喜びで満ちた表情を見て、僕もつい表情が綻んでしまったような気がした。

 そうして、裕介は僕の初めての恋人になった。