高校一年生の時、趣味が同じだと言って話しかけられたのが出会ったきっかけだった。僕はクラスの中でいわゆる「陰キャ」のポジションにいて、その反対に裕介は完全に「陽キャ」のポジション。決して交わらない人種だと思っていたのに…。
 「ねぇ!それって今アニメでやってるやつの最新刊!?俺そのアニメ今めっちゃハマってるんだよね~!」
突然クラスの中でそう声をかけられた。声をかけられたときはほとんど僕は絶望といってもいいような心情だった。教室という狭い世界の中で、僕は自分の席で自分だけの世界を作ってたから。ここは僕だけの大事な居場所。そう思っていた矢先の出来事だった。
陽キャ全開の人に話しかけられるなんて嫌でしかない。僕の大事な静かな世界を壊さないでほしい。そう思っていたのに、こいつは僕の世界に容赦なくズカズカと入り込んできた。
 最初は、趣味のことを面白半分にからかわれているのかと思った。けど、軽く無視をしても、適当にあしらっても、あいつは話しかけてくるのをやめなかった。

「ねー、なんでそんな無視ばっかすんの?俺ただお前と趣味の話したいだけなんだけど…。嫌なら嫌って言ってくれていいからさ。何にも言われないんじゃ、俺だってどうしたらいいのか分かんなくて…。」

 そう言われて、ハッとした。こいつはからかってるんじゃなくて、本当に僕と話をしようとしてくれてる。話したいって思ってくれてる。そう気づいたら、なんだかばつが悪くなった気がして、思わずこんなことを口走ってしまった。

「いや、別に嫌だったわけじゃない。からかわれてるのかと思って無視してただけ。…これ、良かったら貸す。好きなんだろ?お前、俺がこれ読んでるときによく話しかけてきてたから。読みたいならいいよ。」

…言ってしまった。いくら今までの態度が良くなかったと自覚して反省を込めた言葉だったとしても踏み込み過ぎた。急にこんなこと言われたってどうせびっくりされて終わるだけ…。

「え!ガチ!?まじか、めっちゃ嬉しいー!俺お前と仲良くなりたくてさ、でも心開くどころか全く話すらしてくれないから嫌われてんのかと思ったよ。良かった、嫌われてるわけじゃなくて。それにこれ!気になってたから本当に嬉しい!すぐ読んで感想伝える!」

 それは、あまりにも予想外で、それでいて思っていた数倍ものまぶしい笑顔で帰ってきた言葉たちで思わず何も言葉が出なかった。

こいつ、こんなキラキラした目で笑うんだ…。

 元から端正な顔立ちをしていたが、こんなにまぶしい顔で笑う顔は初めて見て、つい心臓の動きが早くなるのを感じた。
思えば、この時もうすでに僕は裕介のことを好きになっていたのかもしれない。