「よっし、今日は神殿に行こうか」


 我らパーティのリーダー的な存在のローラン。


 「なんかわくわくするね、ローラン、ヘカテ―ちゃん、ルナ」


 昨日、火属性の魔法と風属性の魔法を複合した魔法で乾かしたスカーフが特徴的な不思議な服を着ている異世界から来たナミ。


 クゥン!

 ゆるふわモフモフ代表のルナ。


 「......んもうローランお兄ちゃんもナミお姉ちゃんも早すぎだよ」

 「なんか間があった?」

 「気のせいだよ、気のせい」


 みんなのこと説明してたので、変な間がありました。


 「そっか、気のせいか。ほら、もう見えたよ」


 ローランが流してくれたおかげで深く言及されずに済んだ......。

 宿から出ると直ぐに大きくて純白の建物が見えた。


 「窓から見えたけど、かなりでかいよね?」

 「世界で二番目に大きな神殿だからね」

 「これよりも大きな神殿があるの、ローランお兄ちゃん?」


 クゥン?

 今日は珍しく起きているルナも反応する。

 なんかルナって私達の言葉分かっている気がするよね。


 「ここよりも東にいったところにテラプロメサっていう国があるんだけど、そこの国にある本神殿が一番大きんだよ。神殿の全てを決める教皇がいて、聖女と呼ばれている、この世界で一番の回復魔法の使い手がいるんだ」

 「......ぅわわ......」


 なんか私と相性が悪そう......。


 「あ、話している間に着いたみたい」






 元から開いている重厚な真っ白い扉から中に入って、かなり進んだけど


 「ここまで白いと気味が悪い......」


 それに光の妖気で満ちている。


 「あははは......。でも、神殿はどこ行ってもこんな感じだから。取り敢えず、まずはお祈りをしようか」


 ローランに連れられて、巨大な石像がある奥に向かう。


 「あら、お祈りですか?それなら、こちらへ」


 真っ黒で裾が長い服を着て、これまた白の頭巾に黒のベールを被った女の人が話かけてきた。


 「えっと修道女さんですよね?親切にありがとうございます」

 「いえいえ。お祈りは初めてですか?」

 「初めてだよ」

 「お祈りとは光の神アポロン様と闇の神へカティア様、精霊王様に日々の幸せを感謝してお願いすることです。早速やってみてください。きっと、祝福を受けることが出来ますよ」


 修道女さんの声でお祈りを始めたんだけど、一体何を願おう?

 そもそも、私が神だから願っても叶うのかな?

 うーん......ってあれ?

 閉じている瞼に眩しいほどの光を感じる。


 「あ......あ......あぁ......」


 修道女さんの声と共に目を開けるとこの間見たばっかりの者たちがいた。


 「水の神のネレウスよ。フフフッ、しばらく来ない間に私達の呼び名が精霊王になっているなんて、どうゆうことかしら?」

 「全くその通りだ。アポロンとへカティアだけ神様扱いとは......。実に良い度胸だな」

 「これこれ、ネレウスにウルカヌスよ。そんなに怒るのではない。みなが怯えておるぞ?」


 ほんとだ。

 静かだなっ思っていたら、みんな真っ青になってる。


 「そーだよ。もっと穏便に」


 (ほら、へカティア、何しに来たのって言って)

 急にアネモイから思念が飛んできた。

 全く状況が分からないんだけど?

 (いいから早く。みんなが不審になるから)

 アポロンからも来た。

 終わったら説明してよね。


 「何しに来た......んですか?」

 「強い願いを感じたからだ。せっかく、こっちに来たことだし、へ......んかを感じる君たちの願いを叶えよう。まずは、そこの男から」


 今、私のことを言おうとしたよね、絶対。

 変化を感じるって何だろうね。


 「ぼ、僕の願いは......二度と進まない時を進めて欲しいです」


 (どういうことだ、へカティア⁈)

 私にも分かんないわよ!

 あ、元に戻ちゃった。

 (単に時を進める感じじゃな無さそうね)


 「あ、すみません。こんなよく分からないこと言って......」

 「お前が謝る必要はない。そうだな......。もし、時を進めて欲しい場所に着いたら、呼んでくれ」


 要するに後でやるって言っているもので全く威厳の欠片が感じられないけど、ウルカヌスが言うと凄く威厳を感じる。


 「俺たちが駆けつけるから、ね?」

 「わ、分かりました」


 神二柱の圧には勝てないローラン。


 「次はスカーフの女の子ね。あなたは何がほしいの?」

 「......私はこのハンカチについて知りたいです!」

 「この布って......。そなた、一体誰にもらったのじゃ?」

 「私の祖母が昔、貰ったらしいです」


 (これ、僕が昔あげたやつだよ。そっか......。今はこの子が持っているんだね)

 (その話、後で聞くからね!)


 「これには主に衝撃を抑える、魔力制御、魔法無効化、の魔法陣が書いてある。後、君に適正があるのは加護魔法......だ。味方を元気づけたい、強くしたいって強く願えばきっと使えるようになるよ。魔法はイメージの世界。君のイメージが現実世界に現れるのが魔法。たとえ、絶対に出来ないことだとしても、できたなんてことがあるから。だからね、このスカーフはともかく適正はあくまで参考。忘れないようにね」


 「はい!あ、ありがとうございます......!」

 
 ナミお姉ちゃんと適正が反対......。

 闇魔法も適正されてないかな......。

 それにナミお姉ちゃんってもう二つ持っているよね?

 (へカティアも気づいた~?アポロンは言わなかったけど、これって)

 魔法消去

 その名の通り、魔法を消す。

 魔法消去なんて、私達以外で持っているの初めて見た......。

 それに、ナミお姉ちゃんの魔法消去って私達の魔法消去と違う感じがする。


 後もう一つは結果改変。

 過去に起きたことを変えることができる。

 もちろん、全ての結果にできわけでもなく、状態変化しか変えることはできない。

 ちょっとクセがあって使いづらいけど、それでもかなり上位の魔法。

 ナミお姉ちゃんは異世界から来ているし、世界を渡る時に得たのかな?

 あくまで、推測だけど。


 「次はそこの獣じゃ。そなたは何を願う?」


 クゥン!


 「あーね。了解!なら、早速、えい!」


 アネモイの掛け声と同時にルナに魔法が掛かる。

 これは、変身魔法?

 人間になりたかったのかな?



 「見て下さい!ぼく、人間みたいになりました!」


 現れたのはふわふわな服に身を包んだ女の子にも男の子にも見える子ども。

 耳やしっぽがあるけど見た目はほぼ人間。


 「可愛いよ~、ルナ!」

 「ぅわわー、ありがとうございます、ヘカテー様!」

 「さ、様?」

 「はい!ローラン様とヘカテー様が僕を連れてってくれて、ナミ様に会えて......。ようやくお話し出来るようになって嬉しいです!」

 「様なんてつけなくてもいいのに」

 「様は付けさせてください!お三方は僕の大切な方ですから」


 様付けって、私のところにいる感じがするけど、ルナが呼びたいならいっか。



 「分かったけど、飽きたらいつでも様を消して良いからね!」

 「飽きる日はきっと来ないので、大丈夫です」

 「獣のことは終わったから、次はあなたの番よ?」

 「わ、私⁈」


 私もするの⁈

 (当たり前よ。へカティアちゃんだけやんないなんて、後で何か言われるわよ?)

 (ヘカティアは何してほしい?)

 (何でも良いぞ)

 本当に何でも良いの?

 (もちろんじゃ)

 (一度言ったことは守るんで!)

 それなら......


 「昔、渡したという宝について」

 「ヘカテ―、丁寧に!」

 「......昔、渡したとされる宝について教えて下さい」

 (宝って?)

 昔、人間に渡した魔道具のことらしいんだけど、知ってる?

 (あれのことね。分かったわ)


 「私達はかつて一人の人間にいくつかの物をあげたの。今後の発展のために」

 「形は全て異なり、どれも綺麗な石が使われている」

 「その石は人間の感情に反応するようになっていて、どんな形なのかはやってみてからのお楽しみなんだけど、欲を満たせるんだよね~」

 「人間の心を強く反映する。だから、妾達は心が美しい一人の人間に与えたのじゃ」

 「今はどこにあるんですか?」


 使い方によってはかなり危険.......。

 回収しといた方がいいかもしれない。



 「.......それが、僕達分からないんだよね」

 「はぁ?」

 「ヘカテー!」


 うっかりいつも通りの言葉になって、ハラハラしているローランからお小言を言われる。

 ローランから見れば、私は神様相手に生意気なことを言っているように見えるから仕方がないよね。


 「渡した子が死んだ後は何処に行ったのか分からないのよね」

 「すまないのう。あまり参考にならなくて」

 「ううん、参考になったよ。もう少し調べてみるね」

 「じゃあ、俺達は帰るから。じゃあね〜」

 「またどこかで」


 光が消えて元に戻る。

 かなり光っていたのか、部屋の中が暗く感じる。


 「あ〜、めっちゃハラハラした.......」

 「僕も......」

 「やはり皆様威厳があり、神々しいですね」

 「そ、そう?」


 最初の方、かなりガバガバだと思うんだけど?

 私の名前を言いそうになったり、設定が適当だったりしている。


 「そうって.......。ヘカテーって神様や精霊王様に敬意ないよね?最後、タメ口になっていたもん」

 「あー、敬意はないかな。尊敬はしているけど」


  普段が普段だからあれだけど、影で頑張っているのを知っている。

 まあ、本人の前では絶対に言わないけど。


 「あ、あの、お宝とは神物のことでしょうか?」

 「神物とは何でしょうか?」

 「言葉足らずですみません。神様が仰っていた物と同じだと思います。昔、それぞれの神殿には神物と呼ばれるお宝が奉納されていたそうです」

 「その話詳しくお願いします!」

 「は、はい」


 ナミお姉ちゃんの勢いに押されながらも修道女さんは話してくれた。


 この世界を作った神様は1人の心が美しい少女に宝物を授けました。

 少女は宝物を使ってこの世界を豊かにし、やがて聖女と呼ばれるようになりました。

 少女は世界中に神様を祀る建造物、現在で神殿と呼ばれる建物を作りました。

 そして、それぞれの神殿には宝物を1つずつ置くことになりました。

 少女が寿命を終え、聖女が何代か代替わりする時には宝物は神物と呼び名を変えて現存していました。


 しかし、いつの時代だったのでしょうか。

 神殿の奥で厳重に保管されていた神物は盗まれてしまいました。

 全ての神殿で、全く同じタイミングで。

 盗み出した犯人は見つかりましたが、血気盛んな兵士に殺されてしまい、神物の在処は分からなくなってしまいました。


 「この間の洞窟は宝物を保管していたかもしれないな」

 「洞窟?」

 「もしかして、あいつがいたところですか。確かに、微かですが、神様の妖気を感じました」

 「それは本当ですか?!」

 「うん。何も無かったけど、妖気は感じたから、最近まで宝物が置かれていたと思う」


 魔道具は持ち主を選ぶ。

 魔道具に相応しい持ち主ではないと、最大限に力を引き出せない。

 盗まれてから時間が経っているから、もしかしたら持ち主が現れているかも知れない。


 「そんな宝物、一体どこにあるんだろう?」

 「そういう時に限って、近くにありますよね」

 「灯台下暗し的な感じね!ローラン、へカティアちゃん何か分かった?」

 「うーん......」


 (へカティア、僕達が渡した魔道具で思い出したよ!)


 「ほ、ほんと!」


 (魔道具はね、ネックレスとかティアラとかになっていた気がする)

 (アポロンの言う通りよ!あの子に合う装飾品としてあげたんだもの)

 (そうそう〜。見た目が魔道具に見えないようにね。かなり工夫したんだよね)


 「本?」


 声に出てた?!

 えっと、えーっと


 「......本、に書いてあったの!宝物は宝飾品になっているって」

 「宝飾品ということはティアラとか指輪とかのことでしょうか?そこに綺麗な石が使われているということでしょうか?」

 「修道女さんの意見あっている気がする。宝飾品なら綺麗な石を使うことができるからね」

 「ということは、この世界の宝飾品を探し出せば宝物が見つかるかもしれませんね!では、早速......」

 「待って、るな。ここに来てそんなに日が経っていないけど、宝飾品ってかなりの数があるんじゃないの?小さい物だったら屋台でも売ってそうだし、貴族とか王族はかなり持っているよ」

 「どれぐらい?」


 宝飾品はみんなが作ってくれるからそれなりに持ってるけど、あんまり付けない。

 でも、みんなが一生懸命私の為に作ってくれたから、大切にとってある。


 「同じドレスを着ているところなんて見たことないから、毎日新しいドレスに宝飾品を付けているんじゃないかな?噂で、パーティーとか舞踏会で付けた物は他の人に渡すって聞いたことがある」

 「そ、そんなに......。なら、魔道具を探すのは大変ですね......」

 「ある程度の見た目が分かれば、こちらから王族や貴族の方に伝えることは可能ですけど......」

 「ヘカテー、どんな見た目だった?!思い出せる範囲で良いから」


 どんな見た目なの?

 (どんなって言われても、どんな感じだったけ......?)

 昔、私物作っとけば良かった。

 (もう後悔しちゃだめよ、へカティアちゃん。そうね.....私が作ったのはどれも石の色をしていたわね)

 (私のは魔力感知が出来ない者には普通の物にしか見えない)

 (僕のは、石が1番綺麗に見えるように作った気がする)

 (俺は......忘れちゃった)

 (真面目に答えろ)

 (真面目だよ〜)

 (全く......。アネモイよ、ウルカヌスと遊んではならぬ。そして、ウルカヌスよ、アネモイにいちいち答えてはならぬぞ)


 「無理なら大丈夫だから」

 「?!今、思い出したから。えっとね、石と同じ色だったり、魔......じゃなくて、宝物には見えないような物だったりするって」

 「見つけるのが大変になった......」

 「あ、あの、こういうのは一度別の方向から見るのが良いと聞きました。神物とは全く別、逆の方向から見つめてみてはどうでしょうか?」

 「神物......聖なる物......闇......。あ、魔神とか魔王とか?」

 「魔、魔神?!」
 
 「「「!?」」」


 ビッックリした......。


 「急に大きな声を上げてどうしましたか、ローラン様?」

 「え、あ、いや。なんでもない。でも、逆方向となると魔神だよね......」

 「やっぱり魔神からいくのはな......」

 「いや、変えなくて大丈夫」

 「相当酷い顔をしているよ、ローランお兄ちゃん?」


 大丈夫じゃない。

 顔から血の気が引いて真っ白になってるし、不安を紛らわすためなのか手を強く握っている。


 「魔神から別の話題にしましょう!そうですね......」

 「本当に大丈夫だから」

 「ですが......」

 「僕は大丈夫だから!もうほっといてよ!」


 ローランお兄ちゃんは私達の方を見ずに外へ出てった。


 「え......」


 ローランお兄ちゃんがいなくなった空間で私の小さな乾いた声が響き渡った。