包んでいた光が無くなって、ふと上を見ると太陽が昇っている。

 私の国には太陽なんてないから、きっとここが人間界なのね。

 ん?

 来て早速、常時発動している魔力探知に何か引っ掛かったっぽい。

 確認すると、私から二キロ離れたところとすぐ近くに何かがいた。

 私の傍にいる者は置いといて、妖気と魔力感知から魔獣な感じがするけど、私が知っている魔獣とかなり見た目が違う。

 私の国にいる一部の魔獣は食べ物とか魔物を襲うから、倒さないといけないんだけど勝手に倒していいのかしら?

 でも、被害が出てからじゃ遅いし、見に行っといた方がいいかも。

 魔獣がいる先はここから2キロ......。

 ......いつもなら転移するけど、今は空飛んで行こう、かな。

 重力操作は魔力を使わずに済むもの。

 魔力が少ない今では打ってつけね。

 そうと決まれば、重力を小さくして森の中を飛行していると

 うわぁぁぁぁぁ
 きゃぁぁぁぁぁ

 悲鳴が聞こえた。

 誰か襲われた?!

 急いで行かないと!

 悲鳴が聞こえた方を調べるとさっき感知した魔獣がいるのが見える。

 さっきよりもスピードを上げて飛行すると、馬車が横倒しになって人間が魔獣から逃げ回っているのが見えた。

 魔力が少ないからいつものやつは使えないし......。

 今の私が使える魔法でそれなりに強いのは......


 「水柱!!」


 ちょうど魔獣がいたところに魔法陣が現れて半径二メートルくらいの水が噴き出して、魔獣が飛んで行った。


 「魔法に当たるから、動かないでください」

 「あ、ああ」


 人間を守るようにして降りて、魔獣が飛ばされた方に行くと、魔獣じゃなくて角や肉、石が落ちていた。

 魔獣はどこにいったの?

 辺りを見回しても、魔力探知にも魔獣の反応がない。

 一応、倒したってことで良さそう。

 そんなことよりも、角とか肉は私の国の市場で見たことあるけど、この石って何?

 地面に落ちている石と違って、光を反射して綺麗だし、肉と角と一緒に収納決定。

 空間を捻じ曲げて作った穴に収納し終えると、助けた人間達が驚いた顔でこちらを見ていた。

 私、何かやっちゃったかな......?


 「わ、私らを助けて下さりありがとうございます、魔法使い様」

 「魔法使い様のおかげで助かりました......!」

 「いえいえ、これくらい大丈夫ですよ。あの、怪我、大丈夫ですか?」


 人間達には魔獣から逃げている時に作ったのか体中に傷がある。

 私は怪我しても一瞬で治るし、死んでもすぐに生き返られるから、あまり気にしたことないけど、放置したらだめよね、きっと。


 「私がその怪我治しますよ」

 「魔法使い様は治癒魔法まで使えるとは......」

 「助けてもらっただけで十分ですのに......」

 「気にしないでくださいな。では、いきますよ」


 二人の手に触れて治癒魔法を発動されると緑色の優しい光が傷口を包み込む。

 二人の怪我が治ったの見て手を離して、


 「これで終わりだけど、どう?」


 確認する。

 多分治っていると思うけど、治っていなかったらもう一度しないといけないからね。


 「すごい、怪我が治っているなんて......。治癒魔法があるのは知っていたが、実際に使い手に見たのは初めてだ」

 「怪我を直してくれたお礼に町まで送りたいんですけど、あいにく馬車が......」

 「馬だったら私が探しますし、馬車は持ち上げるので安心してください。町まで送ってくださるなんてありがとうございます」


 町まで早く行けそうだし、馬車を何とかするぐらい朝飯前よ!

 早速、魔力探知で逃げた馬を探すと早速引っかかる。


 「ここから西に行った直ぐのところに馬がいますよ」

 「おう、助かるな。なら、私は馬を連れてこよう」

 「お前さんはこっちを頼む」

 「ええ。分かりました。気をつけて」

 「ああ」

 「では、私は馬車を元に戻しますか」

 「なら私は地面に落ちた荷物を拾って来ます」


 おじいさんは森の中に行って、おばあさんは馬車周辺に散らばった荷物を拾いに行く。

 私は横になった馬車の近くに行くと、風魔法で馬車を浮かび上がらせた。

 この時、重力操作で馬車を軽くするのも忘れない。

 別に重くても運べるけど、風魔法を強くしないといけなくなって魔力が減っちゃうからね。

 ただでさえ少ない魔力。

 節約しないと一日持たない。

 魔力切れを起こす。


 「こんな感じで良いですか?」

 「ええ、ええ」

 「おーい、馬見つけたぞー」


 馬を連れたおじいさんも戻ってきた。

 これで、馬車は動きそうね。


 「ほら、魔法使い様乗りな」

 「はい!」


 私が乗ると馬車は動き出して、町に向かった。





 「ここまでありがとうございます」

 「いや〜、お礼はこっちだ。それにしても、本当にいいのかい?まだ森の中だぞ?」

 「町までは歩いて行ってみたいので」

 「そうかい。私達はこっちだから、それでは」

 「また、どこかで」


 二人を乗せた馬車は私達が来た道を戻って行った。

 町って二人の目的地の逆方向だったんだのね。

 ちょっと申し訳ない。

 これからは行先を聞こう。

 そうすれば、逆方向でした、なんてないから。

 さて、町に行こうかな。

 せっかく近くまで来たし。

 そういえば、何も考えずに使っちゃったけど空を飛ぶのって人間の魔法に入っているのかしら?

 魔法使いってさっき言われたから、魔法は存在するみたいだけど。

 何かあってからじゃあ、遅いし、町まで歩いていこう、かな。

 ......近いといいけど。

 久しぶりに歩いていると、森が開いて門が見えてきた。

 長かった......。

 それなりに歩いた気がする。

 門のところに人間がいたけど、おねんねしてる。

 それで大丈夫なの、門番は......。

 ......門番が寝られるくらい平和ってことよね。

 そういえば、私の国で居眠りしたら、何されるんだろう?

 今度聞いてみよっかな。

 寝ている門番を放置して中に入ると、本当に町がある!

 でも、そこまでの文明は感じない。

 人間界って、私とアポロンは作った後、放置してたし、他の四柱もあまり干渉してなさそうだったから、文明があまり発展していないのも当然ね。


 「今日は野菜がお買い得だよー」

 「ただいまパンが焼き上がりました!」

 「魔道具売ってまーす!」

 「パーティに入らない?」


 町の中心部に行くほど人の動きが活発になってる。

 あ、このパン、美味しそう!


 「君、一緒に......」

 「おい、お嬢ちゃん。そのパン気になるかい?」

 「ええ!美味しそうね」


 焼きたてのパンが美味しくないわけないもの。


 「このパンは120テスカだよ」

 「テ、スカ?」


 テスカって?

 長い間生きていたけど聞いた事のない単語。

 人間界特有の言葉かしら?


 「お嬢ちゃん、テスカって知らないのかい?」


 私がこくりと頷くと、店主は優しく教えてくれた。


 「テスカっていうのはお金の単位。物に応じて、テスカは変わるんだ。テスカは仕事の褒美で貰えるよ。テスカを知らないなんて、どこから来たんだい?」

 「向こうの方から来ました」


 闇の国から来ました、なんて言えないもの。


 「向こうって、森だが......。お嬢ちゃんは、買い物したことあるかい?」

 「あるわ」


 一国の王だけど、さすがに買い物をしたことはある。


 「で、お嬢ちゃんはこのパン買うかい?」

 「買いたいんだけど、お金が......」

 「テスカが分からないんなら、お金を持っていないのは当然だな」


 店主さん、そんなに笑わないでよ。

 ......事実だけど。

 私、国にいた時もそうだったけど、お金使ったことないのよね。

 私の国も貨幣を導入しているから、お金は知っている。知識として、だけど......。

 だって、私がお店に行くとみんなが払わなくて良いって言うんだもの。

 なんか、私が来ただけで店が繁盛するからとかで。

 あの時は特に気にしてなかったけど、これからはちゃんと払っといた方が良いかもしれない。

 お金の使い方の練習になるし。


 「そうだな......今度、お嬢ちゃんがお金を持ってきたらパンを半額にするさ」

 「ほんと!なら、私、稼いでくるね」


 100年ぐらい仕事をすれば、パン買えるわよね?

 この世界の相場が知りたい。


 「おう、頑張れ」


 まさか100年後に来るなんて思いもしない店主はにこやかに私を見送る。

 パンを買うためにお金を集めることにしたのはいいけど、どこに仕事があるの?

 全く検討も着つかない。


 「ねえ」


 人混みの方に行けばある気がする。


 「君、冒険......」


 そういえば、さっきから必死に誰か誘っている声が聞こてくる。

 一体、誰を誘っているんだろ......う?!

 突然、私の前に人が飛び出してきた。


 「ねえ、君、僕と一緒に冒険しない?」

 「冒険ってお金稼げる?」


 冒険が何なのか分からないけど、お金稼ぎたい。

 お金があればパン、それに他の物を買えるようになるもの!


 「魔物を討伐したりすると貰えるけど......」

 「なら、一緒に行くわ」

 「え?!いいの?」

 「ええ。私、今、パンが買えなくて困っていて。どうやって稼ごうか考えていたところだったの」

 「そ、そっか。えっと、僕は勇者のローラン。君は?」

 「へカティア」

 「君って闇の神様と同じ名前なんだ〜。光の神様と同じ名前はよくあるけど、闇の神様と同じ名前だなんて珍しいね」

 「あ、あははは......まあ、ねぇ......」


 闇の神様本人なので、名前は一緒です。

 偽名を使った方が良かったのかしら?

 でも、もう遅いし、このままでいいよね。


 「お互いの名前が分かったことだし、ヘカテーの家に行って、許可を取りに行くか」

 「許可?」


 私、冒険に行くのに許可が必要なの?

 あ、もしかして、人間って冒険する時、許可が必要なのね!

 それなら、納得。


 「許可って、ヘカテーの家族だよ。ヘカテーって貴族でしょ?冒険とか旅とかすると家を長時間空けちゃって心配かけちゃうからね」


 私には血の繋がった家族なんていない。

 偶然で生まれただけだから。

 だけど、兄弟みたいなのは六柱いる。

 それに、たくさんの子もいる。

 人間界に行くのはギュンダーにしか言っていないけどきっとみんな許可してくれる。 (たぶん)


 「それなら、大丈夫。きっと許してくれるから」

 「ヘカテーの家族はかなり寛容なんだね」


 そうよ。(ギュンダーを除いて)


 「ところで、冒険って何?どこに行くの?」

 「冒険を知らないのに、冒険に行くって言ったんだ......」


 ローランの元気が少し無くなった。


 「だって、パンが......」

 「パンのために誘いに乗ってくれたんだね......」


 ローランのテンションが地面をぶち破った。


 「そんなに落ち込まないで。それで、冒険って?」

 「もう少し優しくしても良いんだよ。......冒険はね、うーん、簡単に言うと旅をすること、かな。一人ですることもあるけど、何人かと一緒にパーティって言うグループを作って旅をすることもあるんだ。国とかを跨ぐ時、税金が掛からないように組合に入っている人が多いかな。組合に入ると税金が免除されるし、この世界共通の身分証が貰えるからね」


 入国に税がいるなんて......。

 あれ?

 そういえば、私、さっき門をくぐったけど、税金払ってない。


 「ここに入るにも税金がいるの?」

 「いや。ここは自由都市だから税金はないよ」

 「良かった......」


 人間界に来て早々滞納者になるところだった。


 「ヘカテーって組合には入ってない......よね?」

 「もちろん」

 「なら、組合に行って登録しよっか」

 「組合ってどこ?」


 遠くないところが良い......。

 人気が多いところで空は飛べないから、徒歩になる。

 また歩きたくない。


 「あの、目の前の建物だよ」





 ローランに連れられて、ここのなかでは立派に見える建物の中に入った。


 「あら、勇者様?本日は何の予定で?」

 「お、勇者様だ......」

 「初めて見た......」

 「隣にいるチビは誰だ?」



 ローランって結構人気者なのね。

 この建物にいる人間全員がローランを見ている。

 私にも視線が来るけど、どれもが興味。

 こんなところに幼女がいるのは不釣り合いなのね。

 覚えておこう。


 「今日はこの子、ヘカテーの登録をしに」

 「え?この子が?」


 受付のお姉さん、笑顔が落ちている。

 でも直ぐに営業スマイルに戻った。


 「わ、分かりました。取り敢えず、この紙に必要事項を書いてください」


 お姉さんから貰った紙を見ると、色々書くところがあった。

 まずは『名前』

 もう、ローランに話しちゃったからヘカティアで。

 次は『職業』?


 「職業って何?」


 「職業っていうのは、僕でいうと勇者みたいなものかな」


 ごめんなさい、ローラン。

 いまいち分からない。

 そういえば、さっき会ったおじさんとおばさんが私のこと魔法使いって言ってたっけ......。

 魔法使えるし、これで良いよね。


 「ヘカテ―って魔法使いなの⁈」

 「う、うん」


 たぶんだけど。


 「それなら、さっきの家族が許可をするのも納得。ヘカテ―って人間じゃなくて、魔族なんだもんね」


 魔族?

 また知らない単語が出てくる。


 「魔族って?」

 「魔族っていうのは、光の神アポロン様や闇の神ヘカティア様、火、水、風、土の四代精霊王様から生まれたとされる者かな。光の神からは天使、闇の神からは悪魔と吸血鬼、精霊王からは精霊とかエルフとかがそうだね。でも、魔族はかなり少ないから、会うことはほとんどないんだよ」

 「ほとんどない、ね......」


 あの四柱はともかく、アポロンと私は全く干渉していなかったから、この世界に私達の眷属の悪魔とか天使とかはかなり少ない。

 でも、人間が知っているっということは私が知らないところで何かしらの交流があったのね。

 たぶん、あいつしかいないと思うけど、後で一度話を聞く必要がありそうね。

 一体何をしたんだが......。

 頭痛の種でしかないあいつは考えないで、最後の質問『種族』

 ちょうどローランが勘違いしてくれたみたいだから、それに乗っかるのが良さそうね。

 天使は相性がかなり悪いし、エルフは置いといて精霊が人間みたいな姿をしているのは上位精霊ぐらいだからパス。

 そうなると、悪魔か吸血鬼。

 ......吸血鬼でいいかな(適当)。


 「吸血鬼なのに日の光浴びていたけど大丈夫なの?」

 「......長く生きていると克服できるようになって、血液も不要になるの」

 「凄いね、吸血鬼って!書き終わったし出しに行こうか」


 何とか誤魔化せた......。

 ローランが紙を出すとこれまたお姉さんが驚いている。

 でも営業スマイルは保てている。


 「えっと、どの方も最初はEランクから始まるんですが......。ちょっとお待ちください」

 「......何か不味いことした?」

 「不味くはないんだけど、ちょっとお姉さんに同情するかな......」

 「?」

 「人間ってね、魔力を持っている人がほとんどいないんだ。いたとしても、魔石がないと魔法が使えないし、魔石はすごく高いから魔法を使える人は貴族。だから、冒険者で魔法使いはほとんどいないんだよ。しかも、その魔法使いが珍しい魔族となるとなおさら。きっと初めてじゃないかな?」


 初めてって......。

 かなり目立っているわね。

 あー、ギュンダーに見つかったらどうしよう?


 「お待たせしました、勇者殿にヘカティア殿。俺はここの支部長をしているアルノ―と言う。奥へどうぞ」


 お姉さんが奥から誰か連れてきた。

 見た目は中年だけど、手とかは肉刺だらけでずっと鍛錬しているのが分かる。

 にこにこしているけど、油断は出来ない人物って感じ。

 アルノーとかいう人間について行って奥の部屋に入ると、


 「あの、ヘカティア殿ってどのくらい魔法は使えますか?」


 直ぐに質問された。


 「えっと......」


 ローランの感じからだと魔法がかなり珍しいのよね。

 上級魔法や大きな魔法は隠しておいた方が良さそう。


 「火とか水とか風とか土とかの元素魔法と治癒魔法、後は......」

 「ストーップ!あの、凄いことは分かりました......」


 いつのまにかアルノ―さんの顔が白くなっている。

 どうしたの?

 どこか悪かった?

 でも、これは普通な魔法で誰でも使えるけど。


 「そ、そんなに使えたんだね......」


 ローランもなにかやばいものを見たみたいな顔になっている。


 「そんなに驚くこと?」


 まだまだたくさんあるんだけど。

 それにこれらの魔法は魔力がある者だったら誰でも使える初級魔法。

 一部、私がまだ出来ない魔法があったり、高度で難しい魔法があるけど。


 「そりゃあ、驚きますよ⁈魔法使いというものは基本的に一つの魔法しか使えないんですよ⁈全部の属性もできて治癒もできるなどそんな魔法使いはいませんよ......。まさか、勇者殿がこんな凄い方と冒険をするなんて......」

 「僕も結構驚いていますけど、まあ、これから楽しくなりそうですね!それで、ヘカテーのランクは?」

 「そうですね......。あの、勇者殿、ヘカティア殿。今、空いてますか?」





 「それでは、昇級ランク試験を始めます!」


 どうして、こうなったの?

 確か、暇って言ったらこんなところに連れてこられた。


 「では、まずこの魔物から」


 なんか始まちゃったみたいね。

 目の前にはさっき倒した魔獣みたいなものがいる。


 「やっぱり、こんなちっこい娘には無理でしょ?」

 「だってあいつ、Cランクの魔物だよ?俺たちでも無理なのにね」


 上を見ると観覧席になってみんなこっちを見ているけど、私が幼女だから、馬鹿にしてる?

 私は別に気にしないから良いけど、これ私の配下に見つかったら君たち終わるわよ。

 私が何もしていないから動いていないけど、近くにいる者から放たれる冷気が怖い。

 汗なんか搔かないのに、冷や汗が流れているみたい。

 早く倒して観客の意識改革をしないと、私が凍る。


 「氷雨」


 上から大量の氷が落ちてきた。

 冷気に引っ張られて、氷属性の魔法を選んだ。
 
 魔法が珍しいから、こんな初級魔法でも効果はあるよね。

 観客席の方を見ると、


 「うそだろ......。今、魔法を使った?」

 「魔獣倒しちゃったの......?」


 私を軽んじるような発言はなくなった。

 意識改革は成功したようね。


 「これで良い?」

 「......あ、はい。えっと、次は、こちらです......」


 こちら?

 どこだ......いた。

 姿を消しているけど、魔力探知に引っ掛かった。


 「陰火」


 これまた初級魔法で、手から出た青白い炎が隠れていた魔獣を焼き尽くす。


 「えっと、倒し終わったんだけど......」


 あまりにも周りが静かすぎる。

 ここまで静かだと不安になってくる。


 「ヘカテ―のランクはAでいいよね?」


 傍にいたローランの普通の声が響いている。


 「これほどの実力......。Aランクに相応しい......。ヘカティア殿の冒険者カードを作成してきますので、ちょっとお待ちを」

 「よし、一回外に出ようか」

 「う、うん」


 .あの......ランクって何?





 闘技場から出てさっきまでいたところに戻ると、人間達の反応が変わった。

 馬鹿にしているような疑っているような視線が尊敬と恐怖の視線になっている。

 私、そんなに怖くないと思うんだけど......。

 見た目はなんの変哲もない幼女なんですけど。


 「私って怖い?」

 「ヘカテ―が怖いっというよりも、魔法が怖いんじゃないかな?ほら、さっき言った通り魔法って珍しいから、魔法を簡単に使えるヘカテ―を怖がっているんだよ」

 「今日、使った魔法はかなり弱いんだけど」


 氷雨とか陰火って元素魔法の中では殺傷力がない。

 水柱とか重力操作の方がある。


 「あれで弱いんだ......」


 ちょっと魔法に興味持った? 


 「今度魔法について教えようか?」

 「あ、ありがとう。それでね、ヘカテ―。魔法をね、敵とかを倒せる最小限にできたりする?過剰攻撃になっているから」

 「分かった」


 魔力調節は得意だから大丈夫だけど、過剰攻撃だったのね。

 でもこれ以上弱くするって人間界の魔獣はどれほど弱いんだが......。


 「お話し中すみません。冒険者カードが出来ました」

 「ありがとう、アルノ―さん」

 「いえいえ」


 ちょっと顔が赤くなって照れてる。


 「よし、早速行こうか!」


 あの、ローラン。もの凄ーく張り切って今にもここから出ようとしているところ申し訳ないんだけど


 「どこ行くの?」

 「あ......」


 まずは行先から決めよっか......。