「ぅう......。体が熱い......」

 「なんで、ローランと私だけ......?」

 「二人とも、今日はちゃんと寝てて下さいね!病人ですので!」

 「そうそう。ご飯とかはまかせて!」


 いろいろあった日から次の日、ローランお兄ちゃんとナミお姉ちゃんがかぜをひきました。

 雨が降っている中、森の中も追いかけたりして乾かす余裕なんてなかったからね。

 しかも、あの後この宿まで歩いて帰ったし。

 しょうがないしょうがない。


 「きっと体も疲れているんだよ」



 「......ヘカテー、これ、治せる?」

 「治せるけど、一日ぐらいちゃんと休めないとだめだよ、ローランお兄ちゃん」

 「なんで、二人は元気なの?」

 「へカティア様は吸血鬼で、ぼくは魔獣。そもそも人間じゃないから、雨に濡れたぐらいでかぜはひきませんよ」

 「ずるい......」


 羨ましそうな顔でナミお姉ちゃんが見てくる。

 うーん、私、かぜひいたことないから分からないんだよね。


 「ヘカテ―、買い物をするならついでに薬も買ってきてくれないか?」

 「どこにあるの?」

 「教会の修道女さんに言えば買えると思う」

 「教会って......あ!」

 「何かありましたっけ?」

 「ほら、修道女さんに調べもの頼んでいたじゃん、私達!」

 「「あ」」


 すっかり忘れてた。

 それに、私、あれについて調べるようにお願いしたんだった......!


 「神殿に行って来る!ルナ、行くよ」

 「はい!」

 「気を付けてね」

 「薬と買い物頼んだよ」


 ベットで寝ている二人に見送られて、神殿に向かった。





 「ヘカティア、ヘカテー?様にルナ様......!無事だったんですね......!良かったです。あの後、雨で近くの森の崖が崩れたと聞いて......。みなさんが森の方へ向かったんで、心配でした」

 「心配かけてすみません」


 崖が崩れたなんて昨日だけど、もうここまで情報が来てる。

 たった一日で情報が来るなんて早すぎる。


 「いえいえ。そういえば、ローラン様とナミ様でしたっけ。お名前に謝りがあったら、すみません。二人はいないんですね」

 「あっているけど、どうして知っているの?」

 「皆さんが名前を呼んでいらっしゃるからですよ。神殿には多くの方が来ます。その時にお名前で呼べるように、会話に出てくるお名前はよく聞くようにしているんです」


 すごい......。

 会話から名前が分かるなんて......。

 二人なら何とかなるけど、それ以上だと名前が分かっても一致しなくなる。


 「そういえば自己紹介がまだでしたね。私はこの教会で修道女として働くリーリエと申します」

 「ヘカティアです。こっちがルナで、今日来てないのが、ローランお兄ちゃんとナミお姉ちゃん」

 「ローラン様とナミ様は雨のせいでかぜをひいたので今日は来てないです」

 「なら、お薬持ってきますね!」

 「ありがとう」


 これで、一つ目完了!

 後はお使いをするだけ。

 病人って何食べるんだろう?

 パンとか?オムライスとか?

 栄養になりそうな物が売っているといいな。


 「ヘカティア様、ルナ様......!お二人は冒険者なんですよね?」


 リーリエさんがもう戻って来た。

 そして、薬ではなく質問を持ってきた。


 「そうですけど、何かあったんですが?」

 「それが、薬の原料が少なくて......。材料を取りにいっていただきませんか?薬代を無料にして材料採取の報酬も渡しますので......!」

 「その材料って?」

 「ヒソプ草といって、妖気が強いところではないと生えない草です。ヒソプ草の近くには基本的に高ランクの魔獣や魔物がいるので、かなり危険なところなんですが......」

 「そのクエスト、任せてください!ですよね、ヘカティア様?」

 「ヒソプ草ってどれくらいいるの?」

 「一つで薬が百ほど作れますが、出来る限り欲しいです。いつ、採取できるのか分からないので。あ、ヒソプ草は、見れば分かります!普通の草ですが、妖気が出ているので」


 これなら、鑑定しなくても見つけられそう。


 「では行って来ますね」

 「よろしくお願いします......!」





 「やっぱり、早ーい!」


 視界に映る建物、人、植物が直ぐに変わっちゃう。


 「なんで、ローラン様は分からないんでしょうね?ナミ様やへカティア様はよろこんで乗って下さったのに......。ナミ様なんて乗りながら、ローラン様のことを探していましたよ、ヘカティア様」

 「ナミお姉ちゃんって怖がると思っていたから、意外。今度、一緒に空を飛ばないか誘ってみようかな」

 「制御してくださいね。ヘカティア様はスピード狂なんで。耐えきれるのは、主様ぐらい」

 「主様?」


 私がスピード狂なんて、この世界に来て一度も喋ってない。

 知っているのは、私の友達だけ......。

 やっぱり、


 「ルナ、あなた、ただの魔獣じゃないよね?」

 「さすがですね、ヘカティア様。いや、闇の神様と言った方が良いですか?」


 ばれてる......。

 まあ、当然だよね。この間、元に戻ったから。

 でも、私だって、ルナの正体分かったもん。


 「それを言うなら、ルナだって天使、なんでしょ?」


 昨日、私が重力操作をする前に光の翼が見えた。

 光の翼

 光属性の魔法で、かけられた者は天国に導いて死者にさせる。

 基本的にはアポロンかその配下である天使しか使えない。

 かけられた者は上に向かって飛んでいくから途中で消せば、戻れるし死ぬ心配もない。

 でも、天国へ行く前に魔法を消すのは、魔力操作に長けていないと不可能。

 空中に身を投げられた状態で簡単にできるものではないけど、ルナなら可能。

 だって、モルモーでさえ気づけないくらい自然に魔力制御をしているんだから。

 そんなことできる者は魔力がない人間にいないし、私と一緒に空を飛べるなんてアポロン(主様)しか出来ないんだから。


 「いつから気づいたんですか?」

 「はっきりしたのは昨日。よくあの土壇場の中で光の翼を選んだね」

 「体が動いたんですよね。でも、ヘカティア様の方がもっと凄いです!あれだけ離れたところなのに重力操作が届いて......。しかも、正確で......。ぼくももっと練習しないといけませんね」

 「あのさ、ルナ、私の正体みんなに言わないでくれる?」

 「もちろんです!でも、信仰している神がこんなに身近にいるとなると、正直に話してもみなさん信じなさそうですね。でも、ヘカティア様って、本当にこちらへ来るの初めてですね!いつも目をキラキラして周りのこと結構見てますよね」


 そんな風に見えてたの⁈

 恥ずかしい......。


 「......それは置いといて、ルナってなんで来たの?」

 「えっと、主様が、ヘカティア様の旅が心配だって......」

 「アポロンったら......。私のことどう思っているのか......」

 「ヘカティア様の周りって過保護な方が多いですよね。本当によく、行けましたね。ギュンダー様とか絶対に反対してそうです」

 「反対してたけど、粘って勝った」


 ほんとーっにあの時は大変だった。


 「お疲れ様です。あの、へカティア様、お願いがありまして、ぼくが天使だっていうこと言わないでいただけませんか?」

 「こっちもお願いしているから、お互い様だよ」

 「ありがとうございます!あ、へカティア様!こちらなんてどうでしょう?見た目は普通ですが、魔力があり、妖気も漏れ出ています!」


 ルナと話してて目的忘れるところだった。

 確かに、周りは魔力なんてない植物なのに、この草だけ魔力があって漏れ出た魔力が妖気となって出てる。

 かなり微量だけど。

 これがヒソプ草?
 
 ヒソプ草なら何らかの回復系の効果があるよね?


 「鑑定」


 ......うん......回復出来そうだね......え?!


 身体破損は無理だけど、怪我や病気だったら治せるの?!

 ほとんど回復魔法と同じじゃん!

 自分用に1つ残しておこう。

 
 「へカティア様、どうでしたか?これ、偽物ですか?」


 「本物で、しかも回復魔法並に体を治せる」

 「ただの草にしか見えないですけど、凄いですね!この辺一帯に生えていますし、いっぱいもって帰りましょう!」


 ルナが集めて、ひたすら鑑定+収納


 「かなり、多くない......?」


 それなりの数を鑑定して収納して来たけど、ルナの動きが止まる気配はしない。

 これぐらいなら魔力もそんなに減らないけど、終わりが見えない......。


 「そうですね......。今のでざっと二百ぐらいですかね。でもこんなにあるってことは」

 「それなりの魔物か魔獣がいるよね」


 魔力探知が反応する。

 こちらへ向かって来てる。

 妖気からそれなりの魔力を持っていることが分かるけど、


 「なんか、小さい?」

 「ヘカティア様ぐらいですね!それに、あの長い耳......。人間ではなさそうですね」


 なんか失礼なことを言われたような気がするけど、気のせいだよね。

 相手との距離が近くなるほど、魔力探知の精度は上がる。

 この妖気に魔力......。

 つい最近も感じた。


 「精霊?でも、実体化しているし......」


 精霊はこの世界に現れると、私と違って向こう側が見えるくらいに透けてしまう。

 妖気があるところじゃないと、実体化できないんだっけ。

 ここは妖気が出ている草はあるけど、微量だからほとんど妖気がない普通の場所と同じ。


 「あなたたちはどうやってここに来たんですか?ここは目隠しの結界があります」

 「目隠しの結界......。あ、これですか?」


 ルナが結界?を見つけて、分かりやすいように着色してくれた。

 害がない結界だったから、魔力探知は反応しなかったのかな?


 「......。何しに来たんですか?」


 かなり警戒されてる......。

 悪い事をしちゃったかな?


 「ここに生えている草を取りに来たの。この草には回復の効果があるから」

 「そ、そうなんですか⁈......ちょっとついてきてください」


 今一瞬警戒がはがれたけど、元に戻ちゃった......。


 「どうします?ヘカティア様?ついて行っても良いですよね?」


 一応聞いてきたけど、好奇心が抑えきれていない。


 「行くに決まっているじゃん!」


 かく言う私もそうなんだけどね。





 「ここに入ってください」

 「行き止まりだよ?」


 精霊?ちゃんについて奥まで行くと、鬱蒼とした木々や草に覆われて行き止まりになっていた。

 魔力を乱す結界があるのか魔力探知が効かなくて、現在地不明。

 魔力探知でいつも周りを確認していたから、反応しなくなると不安になる。


 「行き止まりではないです。ほら」


 精霊?ちゃんの姿が消えた⁈


 「どうやらこれは外から見ると、結界が植物に見えるような幻覚も付与されています。しかも中に入るには許可が必要になっていますね!」

 「目隠しの結界を抜けた者が入らないようにしている。厳重な警備だね」

 「精霊?様も待っていることですし、入りましょう⁈たぶん許可されていると思いますし」


 ルナと一緒に行き止まりにしか見えないところを抜けた先には、小さな村があった。


 「こっちです」


 精霊?ちゃんの後をついて一つの家の中に入ると、ローランお兄ちゃんよりも年上のお兄さんがいた。

 荒い息。顔が赤いくて、時折開く目は湿っている。

 ローランお兄ちゃんやナミお姉ちゃんみたい。


 「長老を治せますか?」


 無理とは言えさせない強い圧力を感じる......。


 「(ヘカティア様、ヒソプ草の使い方分かりませんよね?) 」

 「(ルナもだよね?) 」

 「(はい。治癒魔法で良いですよね?) 」

 「(いいと思う。お願い出来る?) 」


 私もできるけど、やっぱりここは属性的にルナがやった方が良いと思う。

 適材適所!


 「治癒!」


 ルナから緑色の光が出る。

 私が出す緑色よりも薄くて明るい。


 「こ、これは......」

 「この方が治しました。......私では実力不足でした」

 「そうかい、後で話しを聞こう。私はこのエルフの村の長老をしています。先はありがとうございました」

 「これぐらい大丈夫ですよ。あの、他に何かありますか?」

 「エルフと聞いても驚かないんですね」


 精霊の亜種がエルフでよく見かけるからです、なんて言えるはずがないので



 「私たちも人間じゃないので、驚くのは人間か下位の魔物、魔獣ぐらいだよ」

 「そうですか......。あの、一つお願いがあって」

 「長老......!」

 「大丈夫だよ、エラ。この方たちは優しい綺麗な感じがするから。すみません、話が逸れました。先日の雨でこの村の道が封鎖されてしまい、今も通ることができないのです」

 「ぼくたちは道の片付けをすればいいんですね。分かりました!」

 「そうですか......!エラ、道案内してくれるか?」

 「......分かりました」





 「エラちゃんって、エルフなの?」

 「ここにいる者は全員エルフです」


 封鎖されている道に行くまで、エラちゃんと話す。

 警戒心が強い魔獣みたいな感じがするけど、質問には答えてくれそう。


 「エルフって精霊から生まれたんですよね?どの精霊からなんですか?」

 「よく知っていますね。エルフは精霊から突如うまれた種です。数多の精霊から生まれたのでこれといった属性はありません」


 風の精霊だけかと思ったけど、他の属性の精霊からも生まれているんだ。


 「属性がないってことは、火、水、地、風、の元素魔法や、光魔法、闇魔法も使えるんですか⁈凄いですね!ぼくは光魔法と他少しなので、使える魔法の種類が多くて良いですね」

 「属性がないと言っても、元素魔法と一部の治癒魔法であって、光魔法や闇魔法は使えないのですが、光魔法の使い手......。あなた方は天使ですか?」

 「私は違うよ」


 天使になると吸血鬼と違って、誤魔化しが効かなくなる。

 光魔法なんてほとんど使えないし、何よりも相性が悪い。

 私が光魔法を使っているところをイメージできない。


 「なら、こちらの方ですか?」

 「なんで、へカティア様を疑わないの⁈」

 「なんでって言われましても、へカティアさんは先ほどの治癒魔法時にあなたにお願いしていました。治癒魔法を含む光魔法、元素魔法、闇魔法はそれぞれを司る神、及び、その配下である者が使うことでより効果を発揮できます。あれほどの治癒魔法を私は見たことありません」

 「......」


 言い負かされている......。

 でも、エラちゃんが言っていることは正論。

 エルフのエラちゃんが元素魔法、天使のルナが光魔法、私が闇魔法。

 それぞれの主によって使える魔法は変化する。

 私が元素魔法と回復魔法を使えるのは教えてもらったからで、闇魔法は元々使えた。


 「天使にあったのは久しぶりです。後で、私に回復魔法のご教授をお願いします」

 「う、うん、良いけど......へカティア様には聞かないのですか?」

 「......もう見えてきました」

 「ほんとだ!この土砂を横にどかせばいいのね?」

 「はい」


 エラちゃんの話に乗る。

 だって、なんかヘマをして私もばれたくない!

 そんなわけで、ごめんね、ルナ。





 「かなりの土砂ですね......。ナミ様の言う通り、地面って水に弱いんですね」

 「これってどこに運ぶの?」

 「それはあそこの山になっているところに運んでください。後で再利用します」

 「分かった!......えっと、どこから運ぼう?」


 目の前には土の山。

 周りのエルフは器で運んでいるけど、かなり時間がかかる。


 「水がかなり入って重くなっていますね......」


 水で重くなってる?

 一旦火にかけて水を飛ばしたいけど、それだったら既にやっているよね。

 エルフは元素魔法が使えるんだから。

 別の方法で一度にいっぱい持てる方法......。

 あ!


 「分離精製」


 モルモー、みんなに姿を見せずに重力操作で土と水を浮かばせて

 (承知しました)

 全ての土砂が宙に浮かび、水と土に分離、さらに精製をして純度を上げる。


 「分離精製って物が空に浮かびますっけ?」

 「魔術書には浮かぶなんて記載はありませんでしたよ、ルナさん」

 「エラちゃーん、この水どうする?精製しているから飲み水としても使えるよ」


 土はモルモーによって、運ばれ済み。

 一度に複数の魔法をしているように見えているせいで、エルフの目がまん丸になっている。

 本当は二人だから、一人でやっていないんだけどね。



 「それなら、このバケツにいれて、残りは井戸にお願いします」

 「まかせて」


 とは言ってもやるのはモルモーなんだけどね。

 (姫様、終わりました)

 流石、仕事が早いね。


 「では、長老のところへ戻りましょう......の前に、私に回復魔法をお願いします」

 「い、今ですか?」

 「はい、今です。へカティアさんとルナさんは長老に会った後、直ぐに帰るのでしょう?なので、今、お願いします」

 「......は、はい」

 「それなら、他の魔法も教えてもらったら?光魔法なんて珍しいし」

 「そうですね。他のもお願いします」

 「ちょっと、待ってくださいよ~~、へカティア様......」


 ルナの悲鳴が聞こえたけど気にしない。

 そう、あれは嬉しくて黄色い声を出しているんだから!






 「色々とありがとうございました。道整備だけではなく、光魔法のご教授までしてくださって、気持ちばかりですがどうぞ」


 長老が渡したのは、瓶に入った物と


 「魔道具?」


 しかも、四つある。


 「はい。エラから話しを聞きました。皆様は四人で旅をしていると。これはお土産です。冒険とは危険と隣り合わせ......。ですが、今日はいないお二人を含めた四人ならきっと大丈夫だと思います。目標に向かって進んで下さい」

 「.また来てください、へカティアさん、ルナさん」

 「こんなにお土産ありがとうございます!では失礼します」

 「またね、エラちゃん」


 私と私を乗せたルナは村から離れた。





 「へカティア様、ルナ様、ありがとうございます。これで、お薬が作れそうです!」

 「いっぱい持ってきたから、これも使って」


 十個ぐらいは残して、後は全部リーリエさんに渡す。

 元々は一個のつもりだったけど、これぐらいだったら十個くらい持ってても良いよね?


 「ぅわぁ......!こんなにたくさん......。いいんですか?」

 「良いよ。これでたくさんの薬を作って欲しいから」

 「なら、作ってきますね」


 しばらくすると、リーリエさんが二瓶を両手で抱えて持ってきた。


 「こちらがお薬となっています。一口ほど飲んだら、明日にはきっと治っていますよ」


 後で、鑑定して何が入っているのか調べよう。


 「それなら、一瓶で足りますが?」

 「これはお礼です。もちろん、報酬金も用意しているので、また後日いらしてください。私も調べものをみなさんにお伝えするので」

 「ローランお兄ちゃんとナミお姉ちゃんが治ったら、また来るね!」

 「お薬ありがとうございます」


 リーリエに別れを告げて、朝に出た宿に戻ると


 「ねえ、二人ともなんで寝てないの?」


 ローランお兄ちゃんとナミお姉ちゃんがパジャマじゃなくていつもの服を着ていた。


 「えっと、これは......」

 「ローラン様!ナミ様!これを飲んで下さい!もう今日は遅いので、明日話があります」

 「は、はい......」

 (へカティア様、二人を寝かせることできますか?)

 できる。

 私の得意分野なんだから。


 「まって、これ、かなり苦」


 一口飲んだナミお姉ちゃんを寝かせる。


 「ほら、早く飲んで、ローランお兄ちゃん」

 「い、行きます......。なにこれ⁈初めての」

 「ぼく達がいない間一体何をしてたんでしょうね?」

 「明日の朝、たっぷり聞こう」

 「そうですね!」


 かなり悪い笑顔でルナと話していたことを知らないローランお兄ちゃんとナミお姉ちゃんは幸せだったかもしれない。