かなたは泣いていた。
私は、泣いているかなたの姿を久しぶりに見た気がする。幼少期に見た以来、見ていなかった涙を、今私のために流してくれていた。

私の涙も溢れて止まらなかった。とうに私のダムは崩壊していて、かなたの言葉を聞けば聞くほど大粒の雨が溢れて仕方がなかった。

それでも、次は私がかなたに声をかける番だと思い、泣きじゃくりながらも声をかけた。

「ごめん、ごめんねかなた。私、なにも気付いてあげられなかった。なにも、知らなかった。
知らないのに、気付いてあげられないのに私はかなたのことを分かったつもりでいた。本当に、ごめんなさい。
かなたなら分かってくれるって、どこかで分かってて本心のままにいつも話してた。家に来てくれた時も、連絡をくれた時もいつだって、かなたは静かに私の話を聞いてくれていたから、それに甘えっぱなしでずっと頼り続けてた。でも、かなただって辛かったのに、私は…。自分のことばっかりで、かなたが苦しんでいることに気付けなかった。気付こうともしなかった。本当にごめんなさい。
かなたは、いつも私を優先してくれてたのに、私はあなたを優先することが、支えることが出来なかった…。」

「紫桜、もういいから。もう、話さなくていいよ。
大丈夫、俺わかってるから。お前が今どんな気持ちでそんなに泣いているのか、心を痛めてるのか、俺は、わかってるから。」

かなたは今までで1番の優しい声で私にそう言った。
泣きながら、私の背中をさすってそっと体を寄せた。
それはこれまでで1番暖かい手で、その優しさがさらに私の雨を大雨へと変えていった。

「ありがとう。紫桜。
俺は、今初めて話したことをすぐにお前は受け止めてくれて、支えたいって思ってくれたことが何より嬉しいんだ。なにより、救われた。
俺はお前よりも辛い立場じゃないし、お前の気持ちを完璧に分かってあげることなんて出来ない。それでも俺は、今お前の気持ち改めて聞いて、受け止めて。孤立したときよりももっともっとお前のこと支えたい。
お前はひとりじゃないって、俺が誰よりも傍に居てやるから安心しろって言いたいんだ。
だから、もう泣くなよ。泣かないで。
俺は、今日みたいに、太陽みたいな笑顔の紫桜が1番好きなんだ。
今日久しぶりにあの笑顔見て、思い出した。
だから、またあの笑顔になれるように、俺に支えさせてくれないか。お前の荷物、俺、持ちたいんだよ。
わがままをいえば、俺の荷物をわかった上で、2人で荷物持ち合いたい。紫桜の重たい荷物はおれが半分持ってやるから、安心して俺に預けて欲しい。
紫桜が言ってくれたから、俺も辛い時は、3分の1くらいはお前に持ってもらうから。
だから、これからも俺と2人一緒に、これまで以上に一緒に居て欲しい。」