「そのとき俺、中学の頃のお前を思い出したんだよ。」

その言葉で、私の心は波打った。その波はどんどんと大きくなっていき、息がつまり苦しくなっていく感覚に半分襲われながら、それでもかなたの本当の声を聞きたい一心で、自分の心をなんとか鎮めようとしながら耳を傾けた。

「お前が中学で孤立した時、俺は何もしてあげられなかった。話せるタイミングがあったらいつもみたいに話しかけてたけど、お前は何も悪くないのに、何も悪いことしてないって言ってやることすら出来なかった。
結局、俺も周りの奴らと一緒で、何もしなかったんだ。
紫桜からしたら、思い出したくない過去かもしれない。それなのに話持ち出しちゃってごめんな。
でも、今更かもしれないけど、本当はずっと謝りたかった。ごめんな。」

かなたは、寂しそうに、苦しそうにそう私に言った。
私は自分がどうして泣いているのかが分からなかった。

過去のことを思い出して泣いているのか、それともかなたの本心を聞いて、思うところがあって泣いているのか、それともその両方なのかすらも分からず、それでも涙がまたしても止まらなくなった。

「高校に入って、俺とお前と状況は全然違うけど、同じような立場に立った時、俺、すげぇ悔しくて。
なんであのときお前のこと庇ってやらなかったんだろう、もっと傍に居てやらなかったんだろうって、すげぇ後悔して。
自分が苦しい立場になってからようやく気付いた自分にもめちゃくちゃ腹が立った。同じ立場にならないと気付いてあげることすら出来なかったのかって、どれだけ無力なんだろうって自分のことを責めた。
だから、遅いかもしれないけど、今更になってお前のことを全力で支えてやりたいって思って、これ以上辛い思いさせたくないって思って今傍に居る。全然居てあげられてないかもしれないけど、俺なりにお前の傍に居るって誓ったんだ。
それはきっと、紫桜の親じゃなくて、同じことを今経験した俺だからこそ出来ることなんじゃないかって思って…。」