かなたが置いた打ち上げ花火を回収して帰ってくるだけだったので、みほは思っていたよりも早く戻ってきた。

「おまたせー。時間もいい感じだし、そろそろ帰ろっか。」

「そうだな、またとぼとぼ歩きながら帰りますか〜。」

はしゃいで疲れた体を座って休めていたかなたは、重い腰をあげるようにゆっくりと立ち上がった。

「みほちゃん、片付け全部頼んじゃってごめんね。
ありがとう、助かったよ。」

「そんなの全然大丈夫だよ〜。自分から持ちかけた勝負に負けたから仕方ないことだよ。」

そう言ってみほは笑い、そういえば、とかなたに声をかけた。

「ねぇ、この打ち上げ花火どうするの?」

「あぁ、それ俺が預かっといていい?
また5人集まった時とか機会があったときに俺が持ってくからさ。」

「あーなるほどね。だから今日はやらなかったのか。いいよ、むしろ預けられて良かったわ。」

みほは荷物が減ったーっと喜びながらかなたに打ち上げ花火を手渡した。

「ゴミはうちで処分するから2人とも気にしないでね。そもそも買ったの私だから、普通に持ち帰る前提でいたし。」

「え、いいの?片付けまでして貰ってゴミも任せちゃうなんて…。せめてゴミは私たちで処分するよ?」

「紫桜ちゃんは気にしなくていいのー。今日私たちと楽しんでくれたからサービス!かなたは打ち上げ花火管理してもらうからそれでチャラね。」

そういってみほは満足そうにしていた。
なんだか結局全て任せてしまったが、本人がそれで良いと言ってくれるのならいいのだろうと自分に言い聞かせ、みほの言葉に甘えることにした。

そんな会話をしているうちに、みほとお別れをする場所に差し掛かった。

「今日はほんとに楽しかった〜。紫桜ちゃん来てくれてありがとね!
かなたと2人じゃなくて良かったよ、めちゃくちゃ青春って感じでほんとに楽しかった。また遊ぼ!」

みほは終始明るくて、羨ましいなぁと思ってしまった。

「まぁ俺と2人で花火してもしょうがないしな。紫桜が来てくれてよかった。ゴミもありがとう。
じゃあ、こっから気をつけて帰れよ。」

「ん、もう家そこだし大丈夫だよ。2人も気を付けて帰ってね〜。」

そう言ってみほはひらひらと手を振り、自宅へと足を向けていった。
私たちのお別れはいつもしれっと終わる。
もちろん楽しかったね。とかそういった話はするが長くはしない。
少し一日を振り返ったら、あとはもう、また今度ね。と、気を付けてね。を一言添えて終わる。
別れを惜しむ空気がないのは、きっとまたすぐ会うことをなんとなくみんな分かっているからなんだろう。

私はまだその空気感に慣れきれていないが、2人が何事もなく別れの挨拶を交わしたので、私もかなたと同じように別れを告げた。