「ねえー!2人ともー!」

みほが少し遠くの方から呼びかけて来た声だった。

「「なにー?」」

まずい、ピッタリと揃ってしまった。

「ねぇ同じ返事を同時にしないでよ!」

案の定笑われながら指摘されてしまった。
私たちだって合わせたくて合わせてるわけではないのに勝手に合うのだから、困ったものだ。

「まぁそんなこと一旦どうでも良くて。
ねぇ打ち上げ花火どうするの?準備までやったけど線香花火で盛り上がりすぎてやり忘れてる!」

みほの一言でかなたと私はハッと気がついた。

ちらっとかなたの方を見れば、固まっていた。

完全に思考が止まっているかなたは、しばらくしてから言葉を発した。

「もう今日はやらない!!」

数秒置いたあと、かなたは決定的なセリフを言い放った。
え、やらないの?せっかくかなたが準備したのに。

「線香花火でいい感じの雰囲気で終われたし、みほも片付け終わったんだろ?
そしたらもう今日は花火おしまいにしようぜ。その打ち上げ花火は、また5人が集まった時とか、なにかめでたい事があったときに打ちあげればいい!」

かなたの考えはそういうものだった。
確かに花火もいい感じで終わり、みほも片付けが終わり最後になにか忘れ物がないか見て回っている際に打ち上げ花火を発見したのだろう。
それを考えればたしかに今日はもうやらないのが妥当なのかもしれない。

「え、やらないでいいの!?かなたが必死で準備してたから今からやると思ってたんだけど…。
まぁいいや!かなたがそういうなら片付けてきちゃうねー!」

みほはそう言い残し、少し残念そうな顔をしながら打ち上げ花火を回収しに行った。

「ねぇ、ほんとにやらなくてよかったの?」

「あぁ。今日はもういい。お前の満足そうな顔も声も聞けて、それだけで十分だし青春も完璧に味わったからな。
残りの花火は、また使う機会がきっと来るからその時まで俺が持ってる。」

そう言ったかなたは何故かスッキリとした顔をしていたので、かなたがそう思って決めたことならそれでいいか。と私も納得し、改めてみほが帰ってくるのを待った。