かなたはきょとんとした顔をしていた。
そしてしばらくして、私の顔をじっと見ながらため息を吐いた。

「お前はいいよなぁほんとに。」

「え、なにが?」

かなたの言った言葉の意味が分からず混乱する。

「だって、今友達作りの話してたんだぞ?まぁ昔話から始まったけどさ。そこから俺のいい所見つけて喜ぶとか。意味わかんねぇ。」

そう言ってかなたは小さく笑っていた。
どうやらため息の理由は、私が急に話の方向を回転させ違う話にしたあげく、得意げな顔をしてかなたの顔を覗き込んだからのようだった。

私はただ寂しそうなかなたの顔を見たくなかったから、話題を変えようとしただけなんだけど…。
でも、かなたが今笑ってるならいいか。
私が変って意味で笑われてるのに関してはちょっと不満だけど。

「なによ、私は感謝してるってただ言おうとしただけなのにさ。
顔じーっと見てため息ついて、挙句の果てには意味わかんないってそれ悪口だからね!?」

「ごめんって。別に悪口じゃないよ。昔から紫桜はそういう所があって自然と相手を褒めることが出来たり、いい所を見つけられるのはすごいことだと思うよ?
まぁ今回はタイミングがちょっとあれだったから笑っちゃったけど。」

「うるさいなぁ褒めてあげたんだからいいでしょ!
ていうかかなたこそしれっと私の事褒めてるじゃん。」

「あ、たしかに。俺今お前のいい所言ったわ。
結局そういうところも似てきちゃうんだろうなぁ俺ら。」

「13年も一緒に居たらまぁこんなもんよね。」

なんて、2人で言い合って笑っていた。

かなたとこんなに自然体な自分で話したのはいつぶりだろう。いや、いつもかなたの前では自然体だった。
いくらしんどくても辛くても、かなたの前だけでは自分を繕わず、ありのままの姿でいられた。
けれど、こうやって前のように一緒に笑い合うのは本当に久しぶりで…。なんだか、まるで泡のようにゆらゆらとした気持ちにさせられた。

そんな気持ちも、泡が弾けるようにみほの声掛けによって弾けて消えて行った。