全員の花火に火がつき、色とりどりの火花たちが私たちを幻想的に包み込んだと思えば、さっそくかなたが幼稚園児のようにはしゃぎだした。

「ねぇちょっと!かなた花火持って走るな〜!危ないから!」

「花火なんてこうやって軽く振り回しながら楽しむのが醍醐味だろ!人に花火向けたりしねぇから大丈夫だって!」

満面の笑みで答えるかなたに対して、小さい子の母親のように危ないからやめなさいと叱るみほを見て、つい笑ってしまった。


「あ〜!ねぇ紫桜ちゃん!笑ってないでなんとか言ってよ!こいつ幼稚園児にしか見えないんだけど!」

どうやらクスッと笑ったところを見られてしまっていたようだ。

「ごめんって!
だって、かなたは振り回しながら速攻遠く行くし、みほちゃんはそれを追いかけて結局2人して遠くまで走って行っちゃうんだもん。しかも2人して大声で言い合いしながら。それ見てたらなんかおかしくって。」

自分で説明しながら、状況を改めて見てまた笑ってしまった。

「やっと笑った!」

「え?」

「やっと笑った。お前、最近家行って会った時も元気ないし、なんか思い詰めた顔ばっかりしてたから…。
やっと笑ったって思っただけ!」

嬉しそうにかなたはそう言った。

あ、私、今素直に笑ってる…。

かなたの一言で、今自分が笑いたくて心から笑っていることに気が付いた。

こんなにちゃんと笑ったの、久しぶりかもしれない。
最近は、家族や周りに愛想笑いや作り笑いばかりしていた。

作り物ではなく、自然な笑顔はいつぶりか分からないほどだった。
けれど、かなたはそんな私の笑顔を簡単に引き出した。

「…やっぱりかなたってなんか癪に障る!うるさい!」

もういい、今日ばかりは自分なりにはしゃぎきってみよう。
そう思い、少し離れたところにいるかなたに向かってそう言った。

「おい!お前、俺が心配して言ってやったのになんだよ癪に障るって!しかもどさくさに紛れてうるさいって言っただろ!」

「そうやってすぐ騒ぐところがうるさいのー!
だからみほちゃんにも幼稚園児みたいって言われるんだよ!」

「あははっ。ほら紫桜ちゃんからも言われてる!やっぱかなたは子供なんだよ!」

楽しい。

久しぶりに持った感情だった。
ごにょごにょと濁した声ではなくはっきりと相手に聞こえる声で言葉を発し、笑いたいと思ったときに笑っている。笑えている。
普通のことなのかもしれない。
けれど、最近の私からしたら、それは全く普通の事ではなくむしろ特別で。
いつぶりか思い出せないほど、心から楽しいと思えた。

そんな自分になれたことが、嬉しかった。