7月の海は、少し肌寒かった。
けれど、肌になびく風はどこか落ち着いて、安心した。

「ほんとは5人集まるはずだったのに、2人ドタキャンしたせいで結局3人になっちゃったね〜。」

花火の準備をしながらみほが口にした。

「そうだったの?」

知らなかった。
というかそもそも私、今日のことかなたから何も聞いていなかったんだった。

またもやかなたへの不満も心に抱きながら準備を手伝った。

「あれ?紫桜ちゃん知らなかったのか。本来はね、いつもの5人が集まるはずだったんだけど、やれバイトが入っただの塾がどうだの言って当日になって連絡来て今って感じ。」

みほは首を横に振り、半分楽しそうに、半分呆れながらそう言った。
いつもの5人とは、かなた、みほ、私の他に男女1人ずつを入れた5人のことだ。

この5人は、かなたやみほを筆頭に気が付いたら話すようになって、気が付いたら仲良くなっていた。
よく考えたらとても不思議な関係だ。
個人間での関わりは特に持っておらず、集まれば全員が自然と溶け込み何気ない会話をしれっと始めて楽しめてしまうのだから。
しかもただただ急に集まり急に遊ぶような関係なので、本当に不思議なグループだ。

ぽつぽつとみほと近況など他愛のない話をしていたら、あっという間に準備が終わった。

少し離れたところで小さな打ち上げ花火を準備していたかなたも終わったようだった。

「よし!じゃあ始めるぞ!」

かなたの意気揚々としたその声で、私たち3人だけの少し早い小さな小さな花火大会が始まった。