それから間もなくして玄関のチャイムが鳴った。

相手は分かっているが、念の為インターホンに出て確認をする。

「…どなたですか。」

「かなたです。紫桜(しお)居ますか。」

「ん、今行くね。」

久しぶりにかなたから名前を呼ばれたなぁ、なんて思いながら重たいドアを開けた。

「久しぶり、最近どう?」

そこには以前と何ら変わらないかなたが居た。

「んー、別に。いつも通りかな。特に何もないし、気が付いたら1日が終わってる毎日。」

「なにそれ、引きこもりの典型じゃん。」

そういって笑うかなた。

うるさい、そんなこと私が1番分かってる。

そんなことを思い、少々イラッとした気持ちを抱えながらも話を変えた。

「で、用って何?連絡とってる流れで会うことはあるけど、こんないきなり来ることなんて滅多にないのに。」

そういうと、かなたはあるものを取りだした。
「いや、学校の帰り道に見つけて、お前好きだったよな〜って思ってつい買っちまったから渡しに来た。」

それは、私の好きなお菓子の新作だった。

「え、これ渡すためにわざわざ来てくれたの!?」

「そう。最近会ってなかったし丁度いいかな〜って思ってさ。せっかくなら普段頑張ってるしお菓子のひとつぐらい買ってやろうかなって思って優しいから買ってきてあげた。」

嬉しいと思う反面、少し気になる言葉があった。

「全然、普段頑張ってないのに…」

ぼそっと、つい言葉に出てしまった。

「何言ってんの、お前いつも頑張ってんじゃん。
パジャマ姿だけど、お前なりに毎日生きてんだろ?
それだけで十分頑張ってんだろ。」

真剣な顔をしてかなたが言う。
その言葉に、私の中の何かが少し動いたような気がした。

私、頑張れてるのかな、