かなたとは中学に入ってから1度もクラスが同じになることなく3年間が終わってしまった。
なんとなく気にかけてくれているのを雰囲気で察し、お互い深い言葉を交わすことはなくそのまま3年間が終わっていった。

だがメッセージのやりとりはしていた。
特に用があったわけでもないが、お互いなんとなく連絡を取り合う日々が多かった。

それは高校に入っても変わらなかった。家が近いため、学校帰りに少し会ったりなど関係は変わらず続いていた。

だから、家族の次に病気や転校について話したのはかなただった。

かなたは、私の真剣な話を聞いても特に顔色を変えず、けれど真剣な顔でこう言った。

「そっか。お前がそう決めたならそれが正解なんじゃない?俺はお前が決めたことに否定も肯定もしないし、病気だからって今までと違う対応を取るつもりもない。けど、俺はただお前のこと応援してるよ。」

正直、言葉が何も出なかった。
無機質な言葉で伝えた私に対して、かなたも無機質な答えを返してきた。
けれど、無機質な言葉とは反対に、その言葉を紡ぐかなたの表情と声は優しかった。
なんとも言えない気持ちが心臓を伝って身体中に駆け巡る感覚がした。

ただ1つ思ったことは
かなたに話してよかった。
ただ、それだけを強く心から思った。


その後、私は通信制の高校へ転校し、半分引きこもりのような日々が続いた。
そんな日々の中でも、かなたは定期的に連絡をくれた。その連絡だけが、私を今までと同じように扱ってくれている安心材料だった。
そして、何も気にしない素振りで私の家へ時々やって来て、他愛のない話を少しして帰っていった。
これがかなたなりの心配の仕方なのかもしれない。

そんな少し前のことをぼんやりとベッドの上で思い返していたとき、手元から通知音が鳴った。

「ねぇ、今家にいる?」

突然かなたから届いた1件のメッセージだった。

「いるけど。なんか用事?」

なんとも淡白な返事だ。我ながらそう思う。
けれど、相手はかなただし、学校に行けなくなってからというものの、私の心の糸は切れたままで相手を気遣ってメッセージを打つなんてことができる状態では無かった。


「渡したいものあるから家行くわ、もうすぐ着く。」

前言撤回。
かなたのほうがよっぽど淡白だ。
淡白というか、雑。
これでも私一応女の子なんだけど。

そんなことを思いながら、パジャマ姿であったがもう間に合わないしめんどくさいと思い着替えもせずそのままかなたを待った。