時計を見たら昨日出掛けた時間と大体同じ時刻。
昨日と同じ上着を着て、漫画を書いたノートをバックに入れ外に出てあの公園を目指す。
積もった雪で歩きにくく、どんどん濡れていくズボンと靴。通行人に学生は居ない。だからこうやって外を歩けるんだけど。
公園が見える。
居ないかな、居ないよな、と、思いながらも昨日座っていたベンチが見える所まで歩いていくと、広い空き地の真ん中で円を描くように歩いてるかとま君が見えた。
──いた……
かとま君も昨日と同じ上着に、やっぱり昨日もいた犬のお人形を持ちながら、雪を蹴りあげるように歩いている。
「かとま君!」
「……??」
名前を呼ばれたかとま君は、私の姿を見てニコッと笑いながら物凄い勢いで、こっちまで走ってきた。
近づいてきた彼は、やっぱり色白で頬が赤く染まっている。と、思っていたらかとま君が申し訳なさそうな表情で、
「えっと……名前なんだっけ?」
印象に残らなかったんだと自分の存在に少しガッカリしながら、
「ななこです……」
「あぁ!ななこちゃん。昨日遊んだね。今日も会えたね」
それでも彼の記憶に残っていた言葉にホッとして、ニコニコとしている彼につられてこちらも笑顔になる。
「かとま君、何してたの?」
「えー?昨日より雪が積もったから一番乗りで雪を踏んでた。あ、あと飛行機見てた」
「飛行機?」
「そう、天気が良いとよく見えるから。飛行機大好きなんだ」
かとま君が片手で鼻をスッとすする。バックから使う?と、ポケットティッシュを差し出すと「鼻かむの嫌いだからいいや」と、断られる。
鼻かむの苦手な人もいるんだなと何となく思いながら、空き地に戻る彼の後ろを離れてついていった。
空き地には沢山の足跡があるが、きっと全部かとま君の足跡だろう。
「かとま君沢山雪踏んだんだね」
「うん、白い雪大好き。ちょっとワンちゃん持ってて」
そう言いながら、まだ踏んでいない場所を次々足跡を残していくかとま君を、私と渡された人形で見守っていく。
その姿はあまりにも無邪気で、そして楽しそうだ。
とてもじゃないけど一個上には見えない。少なくともこんな一人で雪を踏んではしゃぐ同級生は見たことない。
それはあまりにも儚くて、そして一人で楽しむ姿がとても強く見えた。
「あー楽しかった。ななこちゃんも踏んでいいよ」
「もう足跡だらけじゃん」
「本当だ、僕の足跡だらけだ。ごめんね」
何故か謝るかとま君を見て、私はクスクスと笑う。