学校を休んで二週間が経過した。
今のところ昼夜逆転にはまだなっていない。
夜になれば眠くなるし、目覚まし時計をかけていなくても朝はキチンと目が覚めてしまう。
住んでいる団地の間取りは狭く、私の部屋と居間には仕切りすらも置いていないせいか、お母さんがバタバタと動く足音も冷蔵庫を開ける音も全て聞こえてしまう。
この朝の慌ただしい生活音に目が覚めるのは仕方ないと言えば仕方ない。
「ななこ、今日も行かないの?学校。」
「……」
「本当にどうするのよ。あんまり休みすぎると今度は行きづらくなるよ。お母さんもう仕事行くから」
「……」
一週間程休んだ辺りから、お母さんが学校に行かない私を心配するどころか、不登校のせいで進路に響く可能性の方を心配しているのが、言葉の節々で感じとれる。
お父さんは単身赴任でお盆とお正月にしか会えない。
「そうやって子供のこと放ったらかしで全部私ばっかり!!」
窓を閉めて、ベランダでお父さんと電話で話して聞こえる内容はいつも荒々しい声。
お母さんお父さん、こんな娘でごめんなさい。でも怖い。そして自分が弱くて学校に行きたくない。
作ってくれた朝ごはんの目玉焼きの黄身は、形がどろどろに崩れてソーセージも焦げていた。炊飯器のご飯は二日前に炊いたもので少し黄色くなっている。
不登校になる前は毎朝炊きたてのご飯を食べて、卵は何が良い?と聞いてくれたお母さんは、学校に行かない私に対して少し冷たくなっていった気がした。
だけどどうしようも出来なくて、漫画を書いてはこの現状を逃げているのは分かっているんだ。
漫画の世界のお母さんは、優しくて可愛くていつだって私の味方なのに……。
目玉焼きはソース派なので、トロッと崩れた目玉焼きを一周させてかける。
何で醤油じゃないのよと、お母さんに否定をされた事があるけどそんなことを言われてもこの味が好きなのだから仕方ない。
「ごちそうさま……」
誰も居ない家で、ボソッと呟く。満腹ではないが、腹八分目といったところか。学校に行かなくなってもお腹は減るし、昼ごはんにと置かれた500円玉で毎日昼はカップラーメンとスナック菓子を買っては現状維持な体重。
お皿は洗っておかないとお母さんが怒るので、食器を洗ったあとはまた机に座って漫画を書く。
換気の為に窓を開けると、外から聞こえてくる騒音を右から流すように聞き、大学ノートとペンと定規を使っていつもの恋愛漫画を書いていくが。
……あれ?次のページを見たらノートがあと数枚で終わる。
新しいノート、あ!そうだ、結局無くてもう使わないかと勝手に数学ノートを潰したんだった。流石にまた授業で使っているノートに書くのはマズイかな。100円ショップでノートを買いに行こうと暖かい上着を羽織り、玄関に向かって汚れたスニーカーを履く。