どうして僕が傷つかないと決めつけるの?
頭の中で、かとま君の顔と台詞がグルグルと回る。
どうして私、決めつけていたの?
彼が放つ言動や行動に、どうして勝手に強いと決めつけていたの?
もしかしたら、彼が大好きな物を否定されてきた事に沢山傷ついていたかもしれないのに。
心の何処かで自分より幼く見える彼の存在に、理解者が少ないのは私と同じと勝手に仲間意識を作って、安心していた勝手な本音が彼に見透かされた気がして申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
あんなに表情が一瞬にして消えてしまうなんて。
私は……
何て愚かで最低な人間なんだろうか。
彼の言葉にフォローもしないで逃げてしまった事にも身勝手で、自分がこんなにも最低だったのかと、嫌になる。
私を虐めてきた人達と、これじゃあ同じだよ。何で私ばっかり…傷つく身にもなってみてよと何度も悔しくて泣いたあの日々。なのにあの人達と私は同じ事をしてしまったのだ。
ごめんなさい。ごめんなさい。
かとま君、ごめんなさい。
傷つくよね。誰だってそうだよね。
自分を否定されて気にしないなんて、大好きな物を大好きと素直に言えるかとま君の心が強いなんて。
勝手な思い込みをしていた。
私が来るかもしれないと待っていてくれた頬っぺたがピンク色に染まっていた貴方の事を、憧れていたのは本当だよ。
本当なのに、逃げてしまった。彼を置いて、謝りもせずに。
後悔したまま家のドアの前まで着き、ずっと心臓がバクバクしている。
家の鍵も焦って定まらない。
ようやく開けた扉に、隠れるように布団に潜り込む。
申し訳なさと逃げてしまった後悔に、身体を丸めて身を潜めてしまう。
ごめんなさい。
謝っても届かない言葉。
彼には届かないごめんなさいを、心の中で何度も唱える。
かとま君のお陰で、変わりたい自分がいたのは確かで、強くなりたいと切に願ったのも確かで。
もっと漫画を書きたいと思えたのも事実だよ。かとま君のお陰なんだよ。
それなのに……そんなかとま君に対して、私はなんであんな言葉を言ってしまったんだろう。
周りから馬鹿にされても気にしないでしょ?
いいなぁ、そんな強いメンタルで毎日過ごせて。
「そうだね、気にしないよ」
「僕強いから」
かとま君ならそんな返事を言うのかなと勝手に想像していたんだ。
傷ついていたなんて、思ってもみなかった。
強いと思っていた彼の存在は、皆と同じ。変わっているわけでもない、独特でもない。
嫌な事、否定的な事を言われて誰だって傷つくのは考えてみたら当然のこと。
ごめんなさい。
何度も何度も浮かび上がってしまうあの時間が、彼のあの顔が、忘れられない程後悔してる。