一年に一度だけ、その大きな望遠鏡で、星が見られる。
八月の、ぼくの誕生日に。
ほかの人たちには内緒だよってお父さんが言う。
お父さんがぼくを持ち上げて、ぼくは望遠鏡を覗き込む。
この大きな望遠鏡で、ぼくのおじいちゃんは、新しい惑星を見つけたんだ。
地球からずっと遠くにある、暗くて、空には見えない星。
この望遠鏡でしか見ることができない星。
いつかぼくも、そんな大発見ができたらいい。
大きくなるたび、知っている星座が増える。
十歳になったぼくは、九歳のぼくよりたくさん星を知っている。
だけど、それよりもっと小さい頃、いちばん最初に教わった星座はーー
「琥珀座!」
ぼくは望遠鏡に顔をくっつけて言った。
四つの星を繋いだ星座。
ぼくの名前と同じ星座。
お父さんとお母さんが見つけた、秘密の星座。
「ああ、そうだね、琥珀」
見上げると、お父さんは優しい顔でそう言って笑った。
ハレの夜空には、いつでも、どこでも、その星座を見つけられる。
夏の暑い日でも、ものすごく寒い冬でも。
山の上の天文台からも、家のベランダからも。
見上げれば、いつもそこにある。
きっと、さみしくないように。
どこにいても、その四角い星座は、ぼくらを優しく見守ってくれているんだ。