「ああっ!」
夜中に隣で柚葉の叫び声が聞こえて、僕は慌てて飛び起きた。
「な、何? 産まれそう?」
「違う……流星群」
時計を見ると朝の四時だった。
流星群が見られるのは夜の九時頃から明け方、とされているけれど、ピークはとっくに過ぎている。
「いや、まだ間に合うかも」
僕は勢いよく立ち上がった。
窓を開けてベランダに出る。
天文台に行けばもっとよく見られるけれど、こんなときに山には連れて行けないのでアパートの二階で我慢だ。
空はまだ暗かった。かすかに星が見えた。
しばらく待ってみたけれど、流星群どころか流れ星一つ流れない。
「見えないなあ」
「うん。でも、あれは見えるよ」
柚葉が空を指して言った。
暗い夜空に浮かぶいくつもの星。元ある星座を無視して、四つの星を繋げると、一つの星座が浮かび上がる。
「琥珀座」
琥珀糖座だと語呂が悪いということになって、僕らは四つ星の星座をそう呼んでいる。
空を見上げれば、いつでもその星座を見つけられる。
夏の暑い夜も、凍えるほど寒い冬の夜も、晴れた夜にはいつでも、見ることができる。
しばらく二人肩を並べて星を眺めていた。
夜の暗さが薄くなってきて、星たちの姿がすっと薄闇の中に隠れた。
もうすぐ夜が明ける。
日の出前の、ぼんやりとした空の明るさを、薄明という。
まだ暗い空で、上空の大気が太陽光を散らすように光っているため、そう見えるのだ。
薄明の空を、一筋の星が白い尾をひいて、横切った。
あっと目を見開いて顔を見合わせる。
「いま、見えたね」
「うん、見えた」
琥珀色に染まっていく空の下、僕らは寝起きの野菜ジュースで乾杯をした。