一ヶ月後、僕らは地元の小さな結婚式場で式を挙げた。

 そんな急に決められるものじゃないと思っていたけれど、運よく、結婚式場から空きが出たと連絡があったのだった。

 日取りが決まってからは、招待状を出したり、連日の打ち合わせで大忙しだった。

 柚葉が気持ち悪いと言って行けなくなった日もあった。
 体調が落ち着いてからのほうがいいんじゃないかと思ったけれど
「着たいドレスがあるの」
 と柚葉は言い張った。頑固なのは昔から変わらない。

 そして、あっという間に結婚式当日。
 天気のほうは少しも心配していなかったけれど、見事な晴れだった。

 真っ白なウエディングドレスに身をつつんだ柚葉は、息を呑むほどきれいだった。

 飾りはあまりなく、シンプルなデザインのドレス。キュッと締まった腰のところから裾にかけて、光沢のあるサテンの生地がふわりと花のように広がっている。

 あれ、と思った。なんだか、そのドレスをどこかで見たことがあるような気がした。

「一目惚れだったんだ。だから、どうしてもこれが着たかったの。さすがにまったく同じのはなかったけどね」

 柚葉の言葉で思い出した。

 それは、高校生のときに日帰りで行った京都で、柚葉が見ていたドレスとそっくりだった。

「すごくきれいだ」

 そう言いながら、控え室で僕はもう泣いてしまった。

「ありがとう。恒くんもよく似合ってる」

 柚葉も涙を滲ませながら、笑って言った。


 急遽決まったにもかかわらず、たくさんの人が式に来てくれた。
 家族や大学の友人、新田や吉井さんも。お世話になっている教授が遠くから駆けつけてくれて、柚葉が受け持った生徒も集まってくれた。

 青空の下、色とりどりのフラワーシャワーの中を僕らは手を組んで歩いた。


 病めるときも、健やかなるときも、二人で手をとりあって歩いていこう。


 二十三歳。
 僕らは夫婦になった。