柚葉が具合が悪そうにしていたから、病院に連れて行った。柚葉がいつも行っている病院だ。
そしたら、これは内科じゃなくて産婦人科に行ったほうがいいね、と言われたのだった。
「おめでとうございます。五週目ですよ」
産婦人科の先生はにっこり笑って言った。
僕は呆気にとられて柚葉を見た。
柚葉も目を丸くして僕を見た。
それから、じわじわと感動が湧き上がってきて、手をとりあって喜んだ。
「結婚しようか」
家に帰って、コーヒーを飲みながら、僕は言った。
柚葉は野菜ジュースを飲んでいた。
「いいの?」
「もちろん」
一生に一度のプロポーズをこんな日常の中でさらりと言うことになるとは思わなかった。
病院を出たときにはその意思は決まっていたし、あの感動のあとならなんだって感動的な場面になる気がした。
でもいざとなるとやっぱり照れ臭くて、僕らはコーヒーと野菜ジュースで乾杯した。