階段を上った先、小高い山の上に、その神社は鎮座していた。

 色とりどりの花びらが浮かぶ手水舎で手に水をかけて、境内を歩く。
 砂利が敷き詰められた境内の中心に、長い歴史を感じさせるどっしりとした大木が立っていた。

 鐘を鳴らし、賽銭箱に小銭を投げ入れる。
 ぱん、ぱん、と手を合わせて、目をつむる。
 
 海の神様。
 あなたを心の広い神様と見込んで、お願いします。



 どうか、奇跡を、起こしてください。
 

 目を開けると、高梁さんは隣で手をあわせて、じっと目をつむっていた。
 長い祈りだった。

「笹ヶ瀬くん、何をお願いした?」

 高梁さんがくるりと振り向いて言った。

 ドキリとした。
 僕の、願い事は、一つしかなかった。


「高梁さんと、ずっと一緒にいられますように」


 僕は言った。

 天文台で。観覧車で。海で。美術館で。図書館で。

 ずっと、言いたかったこと。


「高梁さんが、好きだ」