まずは遊園地に行った。

 高梁さんはジェットコースターを羨ましそうに見つめながら
「私は乗れないから、かわりに笹ヶ瀬くん乗ってよ」
 とわがまま女子みたいなことを言う。

 僕だけ乗って意味があるのだろうかと思いつつ列に並ぶ。
 ジェットコースターなんて小学校の頃に何度か乗ったきりだったから、少し緊張した。

 三つ連なったゴンドラがゆっくりと上ってゆく。
 ドキドキしながら見下ろすと、高梁さんが唇を噛みながら見上げていた。ものすごく乗りたそうだ。

 手を振った瞬間、豪速球で落下していった。悲鳴をあげる暇もなかった。

「調子に乗って二回も乗るからだよ」

 ベンチに倒れた僕を見下ろして、高梁さんは鼻で笑った。
 自分で今度はあれに乗ってきてと言ったくせに。

 その次はメリーゴーランド。きらびやかに装飾された白馬にまたがる。
 小さな子供たちに囲まれてちょっと恥ずかしいなと思っていたら
「知ってる? 昔のフランスではメリーゴーランドって大人が正装して乗る乗り物だったんだって」
 と高梁さんが察したように笑って言った。

「へえ」
 僕は感心してうなずく。昔の競馬みたいなものだろうか。帽子にステッキを持ったちょび髭の貴族を想像したらちょっと笑えた。

 想像の中で高梁さんはドレスを着ている。オルゴールの音楽が流れだす。
 少しだけ優雅な気分になって上下に揺られた。

 観覧車にも乗った。
 こういうとき、てっぺんで告白とかするものなのだろうか。それはちょっと狙いすぎじゃないだろうか。
 だけどそんな思いきったことが僕にできるはずがないのは、てっぺんに着く前からわかっていた。

「写真撮ろうよ」

 高梁さんが言って、二人で空を背景に写真を撮った。
 自然と密着してドキドキした。
 でも、結局何も起こらなかった。

 上目遣いの高梁さんは可愛かった。
 僕は半分目をつむって馬鹿みたいな顔をしていた。