夏休みの間にやりたいことを全部やっておきたい、と高梁さんは言った。

 まるで夏休みが終わったらもういなくなってしまうかのような言い方だった。

 高梁さんはもうどこも透けていなかった。
 ほかの人と何も変わらない、どこから見ても普通の十七歳の女の子だ。

「なんかね、十七歳らしく、青春してみたくなったの」

 と高梁さんは言った。

「青春って言葉嫌いなんじゃなかったっけ」

「嫌いだったけど、気が変わった」

 どこか吹っ切れたような、すっきりした表情だった。

「ずっと、私の体には爆弾が入ってるんだって思ってた。いつ爆発するか自分でもわからない爆弾。でもこれは爆弾じゃなくて、檸檬だと思うことにした」

「檸檬?」

「檸檬ならおいしいし、爆発したって人に迷惑はかけないでしょ」

 高梁さんはそう言って、レモネードをおいしそうに飲んだ。
 昼間にスタバでレモネードを飲む。
 たしかに、これは青春だな、と思いながら僕もストローをすすった。