あちこち寄り道をしながら、祭りの会場の真ん中に向っていく。
日が暮れるにつれて、浴衣を着て歩いている人が多くなってきた。
呉服問屋の店先で二千円前後の激安浴衣がバーゲンのように大量に売られている。
高梁さんの浴衣姿を想像してみた。
かわいいんだろうな。
できることなら透けていない状態で見てみたいと思った。
空の色とともに、祭りの雰囲気が濃くなっていく。
もう日傘は必要なかった。というか、あふれ返った人混みで日傘をさすスペースなんかどこにもなかった。
波に飲まれるようにして歩く。はぐれないように前に進むのがやっとだった。
初めて京都に来た僕とは違って、高梁さんは頭の中にこの複雑な街の地図が全部入っているみたいに慣れていた。
慣れない場所で、人混みの中で高梁さんの姿をすぐに見失いそうになる。
「ーー高梁さん」
はぐれたらもう会えないような気がして、思わず高梁さんの手をとった。
高梁さんが驚いたように僕を見た。
はぐれないように、とか何か言えればよかったけれど、うまく言葉が出てこない。
「えっと……」
言葉に詰まる僕に、高梁さんはにっこりと微笑んだ。
自分から手をとったくせに、迷子にならないよう母親の手をつなぐ子供みたいに僕は頼りなかった。