前日までは雨マークがついていて心配していたけれど、当日はからりとした晴れだった。
でもからりとしているのは空だけで、空気は湿気100%なぐらい蒸し暑い。
一週間ぶりに見た高梁さんは、やっぱり透けていた。
それでも、行き交う人の中で真っ先に僕の目に飛び込んできたのは、高梁さんだった。
ブラウスにスカート姿の高梁さんが振り返る。
「笹ヶ瀬くん! やっほー久しぶり」
ついこの間倒れて入院した人とは思えないくらい軽い挨拶だった。
「おはよう」
僕はどぎまぎしながら言った。
「あの、いまさらだけど、ほんとに大丈夫……?」
「大丈夫だって。ほら、顔色もいいでしょ?」
「う、うん……」
曖昧にうなずく。
じつを言うと、透けているから顔色はよくわからないのだ。
「あ、そうだ」
思い出して、リュックを開けた。中からペットボトルをニ本取り出す。
「これ買ってきたんだ」
高梁さんがギョッとしたように目を見開く。
「え、何その緑色の液体……青汁!?」
「調べたら貧血にいいって書いてあったから」
「私、べつに貧血じゃ……」
「え、違うの?」
「いやいや、うん、貧血だった。その設定忘れかけてたけど」
「設定……?」
「うううん、油断禁物だね! 青汁でもなんでもどんとこい」
そう早口で言って、高梁さんはぐいっと青汁を飲んだ。
「苦ッッッ!!?」
顔色がわからないはずなのに、高梁さんの顔が青ざめた気がした。
「純度100%って書いてあるからね」
ペットボトルの表記を見ながら僕は言う。
「青汁100%って何? どこで売ってんのそれ?」
「普通にコンビニで売ってたけど……」
「笹ヶ瀬くんも飲んでみなよ。やばいから」
そう言われて僕も飲む。
一口飲んでうっとなった。罰ゲーム的な苦さだった。
「こんな苦いもの飲んだの初めてだよ」
無理やり飲み干して、ホームのベンチでぐったりする。
「でも、これで人混みでも平気だね」
高梁さんが笑って言った。
高梁さんがそう言うと、不思議と大丈夫な気がしてしまうのだ。