「これ、どうしようか」
 三人でうなった。

 明日から夏休みだ。
 部活や用事がなければ学校には来ない。

「私に任せて」
 高梁さんが何か思いついたように言った。
 新田から携帯を受け取って、校舎に戻っていく。

 僕らは下駄箱の前で待つことにした。

「高梁さん、何するつもりなんだろう」
 階段をのぼっていった高梁さんを見送って、新田がぽつりと言った。
「さあ……どうだろう」
「でも、高梁さんがあんなに行動力があるとは思わなかったな。いつも一人だし、近寄りがたい感じだったから」
「うん」
 僕はうなずいた。

 初めて見たときから、高梁さんはほかの誰とも違っていた。
 僕は高梁さんのことをただ見ていただけで、何も知らなかった。
 でも、いまは、前より少しだけ知っている。
 音楽が好きなこと。
 笑いのツボが浅いこと。
 意外と熱血なこと。
 そしてときどき、突拍子もないことをすること。

 そのとき、廊下のスピーカーから、いきなり大音量で音楽が鳴り出した。
 キィィィン、と音が響く。

『あっ間違えた』

 高梁さんの声がして音楽が止まった。

 ーー高梁さん!?

 
 ということは、いま、放送室にいるのか。