ガラス越しの空が水色から濃い青に変わっていく。
 グラデーションの境目あたりにアーモンド型の月が浮かんでいる。
 窓際に頬杖をついて流れていく景色をぼんやりと眺める。

『なんで、そこまでしてくれるの』

 笹ヶ瀬くんはそう言った。
 自分のために何かしようと思う人がいるなんて、一人もいないと思っているような言い方だった。

『私が嫌なの』

 私はそう言った。
 私が何かしたところで、もうやめてしまった七菜が学校に戻ってくることは、きっとないけれど。

 これは、私のため。
 でも、それだけじゃない。

 笹ヶ瀬くんが、いなくなってしまうかもしれない。
 本気で、そう思った。

 いまならまだ、間に合うかもしれない。
 そして、もし未来が変わったら……

 会いに行こうと思った。
 七菜に会って、もう一度話がしたかった。