メモのやりとりは気まぐれに高梁さんから始まって、毎日続いた。
 物理の授業中、大島が背中を向けたときにこっそり折りたたんだメモ帳を渡す。

『大島、ズボンのサイズあってなくない?』
 と高梁さん。

『短いよね』
 と僕。

『何の歌聴いてるの?』
 と僕。

『青春なんてくそくらえ』
 と高梁さん。

 ……なんだその曲名。

『今日の放課後空いてる?』
 と高梁さん。


 ーーえ?

 僕は目を見開いた。

『空いてる』
 ドキドキしながら返した。

『行きたいところがあるから付き合って』

 隣を見ると、高梁さんはすました顔で前を向いていた。

 相変わらず透けていて、口の端が少しだけ笑って見えた。