晴れって青空のことを言うんだと思っていたけど、星がたくさん見える夜の空も「ハレ」なんだって。
そしてぼくが住んでいる町は、とくべつに「ハレ」が多い場所なんだって。
山の上にある大きなドーム型の天文台が、お父さんの仕事場だ。
観測室にある、ぼくの背よりずっと大きな望遠鏡を、お父さんにこっそり見せてもらった。
この望遠鏡には三つの目があるらしい。
「ニュートン、クーデ、カセグ……あとひとつ、なんだっけ?」
「カセグレン焦点だよ」
とお父さんが笑いながら言った。
「おまえのおじいちゃんはこの望遠鏡を毎日見続けて、太陽系の外にある惑星を見つけたんだ」
お父さんはいつも、自分のことみたいに自慢げにそう言う。
太陽系も惑星も、ぼくにはよくわからないけど、おじいちゃんがすごい人なんだということは知っている。
お父さんに持ち上げてもらって、望遠鏡を覗き込む。
数えきれないくらいたくさんの星の中に、ぼくは飛び込んだ。
ぼくと空の間にあったガラスの窓が消えて、ドームを飛び越えて、星たちが目の前にせまってくる。小さな光が通りすぎて、ぐるぐる回ってる。
見渡すかぎりたくさんの星が浮かぶ「ハレ」の空を、ぼくは飛んでいた。
そこにはたくさんの星座があった。ぼくがよく知っている星座も。
ハレた夜なら、いつでも、どこにいても、ぼくはその星座を見つけることができるんだ。