――なんでふたり、そんなに服が似てんの?


 きっかけは、誰かの一言。

 うんうん似てる似てる。ペアルックかよ! いや、こういうのはカップルコーデって言うんだよ。すごい偶然だね。辺りは軽く盛り上がり、先輩は共犯めいた顔で「ばれちゃったな、おれたちの関係」と言って、わたしは「はい。ばれちゃいましたね」と頷いた。

 砂嵐にびゅうびゅう撫で回されたようなTシャツに、たっぷりと熟したオリーブカラーのボトムス。わたしたちはまるで打ち合わせしてきたかのようにコーディネイトがリンクしていた。


 ――で、きみはなんて名前? 


 そう言ってわたしの隣に座った先輩からは、焦げた太陽のにおいがした。

「よかったら今度、うちの店来てよ」

「行きたいです。少しですけど、わたしも先輩のお店に貢献します」

「や、来たら気に入るのいっぱいあって、少しじゃすまなくなるよ」

「あはは。じゃあ行かないほうがいいかな」

 うっかりくだけた口調で言うと、先輩は「やだよ。来てよ」と拗ねるように言ってポケットからスマートフォンをだした。びかびかした油絵のようなコーティングが施されたスマホケースは先輩によく似合っていた。