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 バイトの採用は、びっくりするぐらいすぐに決まった。

 飲食店での接客経験を訊かれ、今年の暑さは異常ですね、来年はどうなるんでしょうね、という具合に世間話をしたところで、「明日は午後からでよかったかな」と店長が言った。なんという決断の速さ。

 まさかその場で採用が決まるとは思っていなかったので目を白黒させていると、手続きやらなにやらがあることを店長が思い出し、けっきょく、初出勤は明後日になった。

 カフェを出たわたしは、走り出したい思いをぶつけるように先輩にメッセージを打った。

『採用決まりました。先輩のおかげです、ありがとうございます!』

『おーおめでとう!いつから?』

『明後日です』

『え、はや。じゃあ明後日、バイト終わったらご飯いこ。キヨちゃんのバイト祝い。』

 速いのは店長だけじゃなかった。思いがけない誘いに戸惑いつつ、思い出す。

 これは「みんな」もいるのだろうか。

 悶々としていると、『ごめん。さすがに初出勤のあとじゃ疲れてるよな。』と送られてきた。早く返さなきゃ。でも、なんて返そう? がっついてるとは思われたくない。だけど延ばしてしまったら、いつになるかわからない。

 文字を打ったり消したりを繰り返しているうちに、またメッセージが届いた。

『キヨちゃんが都合よくなったらおしえて』

 わたしはもう躊躇わず、えいっ! と返信した。

 躊躇っていられるほど、この夏もこの人生も長くはない。