「ねえ、みーちゃん。隣の人って、どんな人?」
「こわそうなおじさんと、こわそうなおばさん。あと、猫が何匹か」
「ねこっ?」
「ほら、聞こえるでしょ。鳴き声が」
「聞こえないよ」
「鳴き声、すごくちいさいからね。ほら、ご飯さめちゃうよ。食べよう」
 ご飯を食べて、いっしょにテーブルを片付けた。みーちゃんがいれてくれたミルクたっぷりの紅茶とケーキを並べる。チョコレートケーキはほんのりお酒の味がして、なんだか悪いことをしてるみたいでうれしくなった。
「シュークリームも買ってきたんだ。こないだ、あーちゃんがおいしいって言ってたやつ」
「ほんとっ? いま食べていい? それとも明日?」
「いいよ、いま食べて」
 甘い甘いシュークリームを食べてるうちに、こわい音はやんでいた。だけどまだ、身体の奥はびくびくしていた。シャワーを浴びてベッドに横になって、ぎゅっと目をつむってみても、うまく眠れない。時計の針はもう一時を指していた。