「ありがと。アイジがシャワー浴びたら、アイジの髪は俺が乾かしてあげるね」
「どうして自分の髪は乾かさないくせに、私の髪なら乾かすのよ」
「それはやっぱり愛があるから? マッサージもつけてあげるよ。今週、とくに疲れてるでしょ。そうだ、アイスあるんだよ。アイジの好きなやつ」
「……いい。こんな時間に食べたら太るもん」
「こんな時間だからおいしいんだよ。とくに風呂上がりだと。ほら、アイジもシャワー浴びてさっぱりしておいで」
 恋人はマッサージがうまいうえに、絶妙なタイミングで好物を与えてくる。甘えるだけじゃなくて、甘やかすのもうまい。いっしょに暮らしてからは、ますます甘やかし上手になったように思う。それに比例して私の体重が右肩上がりになっているのはやっかいな問題だけれど。
 シャワーをすませると、恋人は宣言どおり私の髪を乾かし、マッサージをはじめた。ソファーに寝そべり、鉄板をあちこちに埋め込んだように硬い身体がほぐされていく。瞼はすぐにとろとろと溶け落ち、唇の端からは涎がこぼれた。