それから次の日もその次の日も、ずっとそんな調子だった。
 みーちゃんは片時も離れようとはしなくて、お風呂だって信じられない早さで出てきた。いままでは三十分くらいかかっていたのに、ささっと五分くらいで浴びて、ずっとぴったりと私の横にいた。
 もちろん隣の人は変わらずにうるさいし、学校の準備も進んでる気配はない。

 ――え……。お母さん、出ていっちゃったの? いつから帰ってきてないの? 親戚もいないって……。うちにおいで、あーちゃん。学校にも通えるようにするから。私に任せて?

 あれは。あの言葉は、嘘だったのかな。最初は「ほんとう」で、途中から「嘘」に変わっちゃったのかな。嘘をつかれるのには慣れていたけど、それはお母さんからの嘘でみーちゃんからの嘘じゃない。
 それでも、あの真っ白な悲鳴の痕を放ってはおけないと思った。
 みーちゃんの味方だって約束したんだから。お母さんだっていなくなったんだから。
 ここをなくしたら、もうなにもない。ぼんやりした輪郭すらなくなって、自分がぜんぶ消えてしまう。透明よりもっと透明になってしまう。
 そうなったら、どこへたどりつくんだろう。