「なんで見ちゃうの!」
「見ちゃだめなの?」
「だめだよ! おどろかせたかったのに!」
 むくれると、ぎゅうっと抱きしめられた。お花みたいな匂いと、ほんのり汗の匂いがする。それに、お日さまの匂いも。みーちゃんの長い髪が首や頬に触れて、くふふ、と笑みをこぼすと、さらに全身をすり寄せられた。
「くすぐったいよ」
「だって、あーちゃんがかわいいこと言うから」
「かわいいこと?」
 訊ねると、真っ白な手が頭を撫でた。いつだってやさしい、みーちゃんの手。
「そういうところがかわいいんだよ」
「えー? みーちゃんの言ってること、よくわかんないよ」
「いいよ、わからないままで。あーちゃんは、そのままでいいよ」
 ほほ笑むみーちゃんに、私は「ふうん?」と首を傾げる。よくわからないけど、みーちゃんがいいと言うならいいのだろう。
「すぐに着替えてくるね」
「うん。ご飯はどれくらい?」
「うーん。今日は食べちゃおうかな。いっぱいよそって」
「はーい」
 お味噌汁を温めなおして、お茶碗につやつやのご飯をよそう。ハンバーグをお皿にのせて目玉焼きをのっければ、平和の象徴の完成。焦げた部分はこっそり剥がして、口に放り込んだ。舌が苦い。