洗濯した衣類を室内干しのラックにかけて本の続きを読んでいると、急に部屋が暗くなった。雲が太陽を隠したのかもしれない。
 みーちゃんが帰るまでのあいだ、この家の明かりはいつもつけていない。エアコンをつけっぱなしにしているぶん、少しでも電気代を浮かしたいのだ。それはみーちゃんに言われたからではなく、私が勝手にはじめたことだった。
 カーテン越しの陽射しがあれば、本は読めるし、食器の汚れだってちゃんと見える。とくに困るようなことはない。
 だけど一度、包丁を使っているときに指を切り落としそうになって、料理をするときだけは必ず電気を点けることにした。
 病院に行くようなことは、ぜったいにしちゃいけない。
 お母さんからずっと言われてたから、いつも気をつけた。それでも、風邪をひいて熱をだすこともあれば、なぜか肌が痒くて痒くて、かきむしってしまった肌が赤くただれて血をだすこともあった。もちろん病院には連れていってもらえなかった。
 物語がクライマックスを迎えるところで、洗濯機が鳴った。そうなってからやっと、ブランケットを乾かすスペースが室内干しのラックに残っていないことに気がついた。
 どうしよう。洗濯機にいれっぱなしにしておくわけにもいかない。