朝になったら、みーちゃんにフレンチトーストをつくると決めている。卵液に浸した食パンたちは冷蔵庫ですやすや眠っているのに、自分だけが眠れない。
 寝なきゃ。はやく、寝なきゃ。
 効果があるかわからないけど、羊を数えてみる。柵を飛び越える、ふわふわの羊たち。羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹……。300匹ほどの羊が柵を越えたところで、まぶたが重たくなってきた。
 もうすぐ眠れそうだな。そう思ったとき、カチャリと音が聞こえた。薄闇のなか、ゆっくりと扉がひらく。
「起こしちゃった?」
「みーちゃん……。どうしたの」
 まぶたをグイとこすり、ベッドから起き上がる。みーちゃんの影は幽霊みたいにぼうっとしていた。
「あーちゃんが眠れないかと思って。こわがってたでしょ、隣の音」
 みーちゃんは隣に寝転んだ。石けんの匂いが、ふあっと広がる。
「いっしょに寝てあげる」
「子どもじゃないのに」
「んー……。でも、心配だから」
 みーちゃんはぎゅっと手を握った。