「あれ、どうしたの、なる。怪我でもした?」
「ちがうの……リレーの結果に安心したら、腰が抜けちゃったの……」
「あはは。かなちゃんお疲れ」

 お弁当を広げる陸と蓮の元まで連れて来てもらい、かなではようやく咲夜の背中からおろされた。
 やはり重かったのだろうか。咲夜はそっぽ向いたまま、かなでの方を見ようとしない。
 ごめんね、と何度も謝りながら、咲夜のTシャツの裾をぎゅっと握ると、咲夜は大きなため息をこぼした。

「怒ってねえから! かなでも早くメシ食え!」
「咲夜は食べないの?」
「食うけど、まだいい」

 かなでの方を見ないまま、財布を持って咲夜はどこかへ行ってしまった。
 怒っていないと言っていたけれど、どう見ても怒っていた。
 おんぶをしてもらっている間は、恥ずかしくて背中に顔を埋めていたので、あまり会話はしていない。
 気に障ることを言ってしまったとしたならば、おんぶの前だろうか。
 眉を下げてかなでが考えていると、陸が笑いながら大丈夫だよ、と言ってくれる。

「咲夜は本当に怒ってないと思うよ」
「そうだねぇ。どっちかと言うと、照れてたね、あれは」
「えっ? ああ、リレーを褒めたからってこと?」

 怒っていないならよかった。
 安堵してかなでもお弁当を広げると、陸と蓮が顔を見合わせる。
 それから二人同時に笑い出した。

「えっなになに、どうしたの?」
「い、いや…………咲夜は大変だなぁ、と思って」
「さっくんの道は険しいねー」

 よく分からないが、何やら咲夜は苦労しているらしい。
 陸と蓮は咲夜の事情を知っていて面白がっているが、かなではその内容を知らない。
 男の子同士でしか話せないこともあるのかな、と少しだけ寂しい気持ちになった。
 でもかなでだって陸や咲夜、蓮に話していないことがあるのだから、お互い様かもしれない。

「咲夜もいろいろ大変なんだね……」

 しみじみと呟いたかなでの言葉に、陸と蓮が再び吹き出したのは、言うまでもない。