このところ、毎日天気がぐずついている。
今にも雨が降り出しそうな薄墨色の空を、葵は今日も憂鬱気に見上げた。
濡羽色の艶やかな長い黒髪、白雪のような肌に、御空色の瞳。縁側に浅く腰掛けて天を仰ぐ葵の憂いを帯びた横顔は、今日も儚く美しい。
もうすぐ十六の誕生日を迎える葵は、幼子の頃から、龍神を祀る美雲神社の敷地内の小さな民家でひとり暮らしている。
美雲神社で祀られている龍神様は、一つ目でとても恐ろしい姿をしているという。
葵は、その一つ目の龍神の花嫁だ。そして、まもなく離縁する。
離縁の雨が降りやむ、その後に――。