最後のピースが埋まらない。もはや完成した図は見えているし、完成したと言っても過言ではなくて。それでも、ここまで来たのだからと、諦められない自分もいた。
「最悪だ」
平日の午前十一時。本来なら高校に行っているはずの時間だが、適当な理由を言ってサボっている。
六畳半の俺の小さな城には、フローリングの床にシーツがごちゃごちゃしているベッドがあって、真向かいにずっと黒い画面のままのゲーム機が置かれた勉強机や、漫画が敷き詰められている本棚がある。床には、空のペットボトルや宅配のダンボールが乱雑に散らかっていた。部屋の真ん中には、緑色のカーペットが敷かれていて、現在俺はその上でパズルを作っている。
「どこにあんだ?」
いかんせん物が多数あるため、どこにピースがあるのかわからず捜索が難しい。ペットボトルをどけると、カラカラと音が響く。そして、床の上にあった埃が立つ。それだけで、目的のものは一向に姿を見せない。
「あーあ、もういいや」
少し探してすぐ諦めた。俺はカーペットの上で大の字で寝転ぶ。背中にはパズルの感触がした。
俺がパズルをやり出したのは、暇をもて余して子供の頃に使っていた引き出しを漁っていると、その中から偶然パズル見つけ、良い暇つぶしになると思ったから。そうしてやってみると、案外簡単に組み合わせられ熱中することができた。昔やったときは、すごく時間がかかり大変だったという印象があったのだが、これも時の流れだろうか。ただ、ピースが足りないと気づき、すぐにやる気を失ったのもまた今の俺だからこそ。時間は良くも悪くも人を変えてしまう。
「あー暇だ」
さっきまでの熱量は嘘だったかのようにやる気は消滅。無気力に天井を見つめる。
いつもそうだ。ちょっとでも上手く行かなくなるとすぐに嫌になってしまう。今日学校を休んだことも同じだ。
入学してから二ヶ月くらい経ち、人間関係はある程度固まってしまい、俺はどこの輪にも入ることができなくなった。勉強に関しても、序盤はついていけたが次第に置いてかれていき、やる気の炎は完全に鎮火。そんな状態になっても、しばらくはなんとか登校していたのだが、とうとう限界を迎え逃げ出したのだ。
伸ばした左手が、ぽつんと置かれたスクールバッグに当たる。中に手を入れて、ガサゴソと漁ると生徒手帳を掴んだ。中を開けると、真顔で少し睨んでいる表情になっている顔写真に、天宮晴という名前が書いてあり、生徒である証明をされている。この時間に私服姿でいる自分をそれに責められている気がして、すぐに放り投げた。
首を反らすと、窓ガラスの向こうの軽く手入れされていない、草木生い茂る庭が見えた。無邪気でエネルギッシュに、庭を走り回って遊んでいた小さな頃とは大違い。あのまま順当に成長したのなら、どうなっていたのだろう。別世界線の想像が膨らむ。まぁ、特に大きく変わったと思える出来事が、あったわけではないので、こうなることは確定していたのだろうが。
「歩きにでも行くか」
いつまでもぼーっとしているほど、忍耐力はない。それに、このまま何もしない状態でいると、罪悪感やらこの先の不安を考え出してしまいそうだ。この部屋のどんよりとした空気から逃げるべく、外に出ることにする。
クローゼットの引き出しから、適当に出した灰色のパーカーと灰色の長ズボン、学校の靴下を履く。バッグに付けていた鍵を取り出して、ポケットに入れ玄関へ。いつものように靴を履くと、つい癖でローファーに一度足を入れてしまう。そんな自分に苦笑しつつ、普段履きの靴に履き替えて、ドアを開ける。すると、少し冷えた新鮮な空気が流れ込み、肌をザラザラと撫でてくる。
「……まぶし」
太陽の眩しさにたじろぎつつ、歩き出す。家々が向き合った住宅街の道を進む。平日にこの時間を歩くこともないので、少し新鮮味がある。途中にT路地が現れ左に方向転換し、そこからしばらくすれば大きな道に出る。
その間にほとんど人にすれ違うことはない。俺が住むこの場所は、都会ではないが田舎でもない微妙な所だ。家々は立ち並んでいるが、遊ぶ場所やコンビニなどはほとんどない。あるのはちょっとした自然と大きな公園があるだけだ。
そんな地元をだらだらと散歩していく。風が吹くと、涼やかな葉音が鼓膜を心地よく揺らす。これからどこへ行こうかと思慮していると、ぱっと思いついたのは公園。
俺は車が通らない横断歩道を律儀に渡って、車止めの横をすり抜け、公園へと続く道に。そこから、数分もかからず広々とした、ほぼ人のいない公園が見えてくる。
「なんか、変わったな」
すごく近くにはあるのだが、ほとんど通らないため、すごく久しぶりだ。まず見えるのは、入り口付近にある砂場。その向こう側にある青色の滑り台なんかはリニューアルされていてた。しかし、その付近にあったはずのターザンロープは、なくなっていた。
公園に足を踏み入れようとすると、場違いな気がして抵抗感が押し寄せた。しかし、それを振り切って中へ。懐かしみながら進む。
「……あれは」
砂場の横を通り少し奥に進むと、ブランコを漕いでいる少女の姿がある。その子の顔には見覚えがあった。
「……」
無言で下を向いて、ブランコに揺られているのは、青山雪ちゃん。確か小学五年生だったはずだ。彼女とは、近所で顔が合えば挨拶を交わすし、何回か一緒にゲームをしたりして遊んだこともある。
「……あ」
彼女は、こちらに気づいたのか顔を上げると、真ん丸な黒い瞳が俺を見た。少し驚いたのか目をぱちくりしている。
「おっす」
「……こんにちは」
雪ちゃんは、大人びた口調で挨拶をして軽く会釈をすれば、可愛らしいツインテールがピョコンと跳ねた。
見た目とは裏腹にクールな性格をしていて、そのギャップがすごい。
「なーにしてんの?」
「別に……」
「ふーん、そっか」
俺は隣の空いているブランコに腰かけた。
「……お兄さんこそ何してるの」
「サボり」
「へー」
まるで興味ない返事が返ってくる。そこから反応はなく、無表情でブランコを揺らす。鉄の擦れるような音だけが、静寂の中で明瞭に木霊した。
「ええと。もしかして雪ちゃんもサボり?」
無言に耐えられず再び尋ねてしまう。
「……まぁそんな感じ」
相変わらずの態度だが、答えてくれて安堵。
「そうか、一緒か」
「一緒にしないでよ」
雪ちゃん漕ぐのを止めて、心外そうにむすっとした表情に。
「どーせお兄さんは、ただ面倒だからサボっただけでしょ。私はそんなのじゃないし」
「いやいや、もしかしたらなんか深刻な理由かもしんないじゃん」
「ううん。お兄さんはそういう人って知ってるし。そうでしょ?」
「……はい」
なぜかはっきりとそう断言してくる。確かにその通りではあるのだが、一応俺がサボったのは初めてだ。どうしてここまで自信に満ち溢れているのか。
雪ちゃんは隠そうとはしているのだろうけど、どうだと勝ち誇った笑みが見え隠れしている。
「じゃあ、雪ちゃんはどんな理由なの?」
「言う必要ある?」
「ないけど……俺は言ったからさ」
少し考えた後に、まぁいいかと小さく呟くと、理由を教えてくれた。
「理由は、学校に行く意味がないって思ったから」
「うんうん。意味って言うのは?」
「はぁ……学校って勉強する場所でしょ。なのに、みんな真面目に勉強しないで遊びのことばっか。それは勝手にすればいいけど、休み時間とか勉強してても周りはうるさいし、しかも邪魔してくるから最悪だし。他にもずっと勉強してるのがおかしいとか言ってくるし、先生も変な目で見てきてもっと人と関われって言うし。もう意味ない」
面倒くさそうに軽くため息をつきつつも意味について話してくれる。
「……なんかすごいな」
「すごくないよ」
思わず感心する。小学生なのにこんなことを考えれるなんて。
「そうかな? 俺が雪ちゃんくらいの頃なんて遊ぶことしか考えられなかったから、すげぇなって思ったよ」
あの頃は遊ぶことに夢中で、好きなことをとことんやっていた。今ではそんな力もないが。
「ふーん」
そっぽ向いて気のない返事をする。ただ、少し声が弾んでいるような気がした。
「お兄さんは何でサボったの? 私は答えたから答えてくれるよね」
「え? いや、なんか学校に馴染めなくてさ。なんか、上手くいかないから嫌になったんだよ」
「それだけ?」
「そんだけ」
少し驚いた様子を見せる。あまり感情を表に出さないタイプなので、珍しいものが見れたと得した気分になった。
「俺ってさ、少し上手くいなかないともう全て嫌になるんだよね。最近はそれがすごくなって、とうとうサボるに至った」
「……でも、上手くなるには上手くいかなくても、頑張らないといけないでしょ? それっておかしくない?」
「……そ、そうなんですけど」
純粋な言葉の刃が胸にクリティカルヒット。発した本人は、よくわからなさそうに首を傾げている。
「……大人って矛盾したことばっか」
吐き捨てるように言い放つ。大人にフラストレーションをためているようだ。しかし、それよりも否定しなくてはならないことがある。
「あの、一応高校生なので子供なんすけど」
「私からみたら高校生は大人」
「そ、そうっすね」
そういえば小さな頃、同じように高校生はとても大きくて、大人のように感じていた。しかし、俺と比べると、雪ちゃんの方が大人びているような気がしなくもない。
「えっと、大人は好きじゃない感じ?」
「好きでも嫌いでもない」
「じゃあ、俺は?」
「え……」
なんだか引いたような表情に変わる。
「いや、何でもないです。すみません」
血の気が引いて危機感を察知。すぐさま撤回した。心なしか距離が離れた気がする。
「そ、それにしても雪ちゃんはしっかりしてるなー」
「すごい話の逸らしかた」
冷たい声のトーンと視線が突き刺さる。
「はは、いやーそんなことは……ないっすけどー。あ、ところでブランコって……いいよね。なんか揺れるし」
精神がアラートによって、かき乱されわけのわからないことしか言えず、もうブランコを漕ぐしか道はなかった。
「……ふふっ。なんかお兄さんってすごく子供っぽいよね」
雪ちゃんが控えめに微笑む。それはまるで雪解け。輝くような純粋な表情はとても可愛らしくて。
それをみた瞬間に安堵が胸いっぱいに広がる。まじで助かった。
「そ、そうかな? 雪ちゃんは大人っぽいよな」
「ううん、全然。それに大人にはなりたくないし」
純真な瞳がどこか遠くを見つめる。視線の先には緑色の芝生が広がっていた。
「その気持ちはわかるな。俺もなりたくない」
「お兄さんは心配しなくても大丈夫だと思うけど」
「え、それって褒められてる? なんか馬鹿にされてない?」
「ふふっ」
すごく馬鹿にされている気がするが、雪ちゃんの微笑みで悪い気分は吹き飛ぶ。
この短時間で、どん底の気分から一気に有頂天まで登ったりして、感情がジェットコースター状態だ。疑似吊り橋効果で、雪ちゃんに対する好感度がストップ高になっている。もちろんロリコン的な好きではないが。
もしかすると、大人になればすごく魔性の女性になるかもしれない。恐ろしい子だ。
少し周囲を見てみると、人気はやはり少なく、公園の周辺の道を歩く老人の姿がちらほら見かけるだけで、二人だけの静寂は変わらない。それにどこか安心感を得ている、自分がいるのを密かに感じていた。
「そういえば、雪ちゃんはここで何をしていたの?」
「勉強してた」
「ここで?」
「ううん。向こうのベンチで。今は休憩してた」
小さな指で左側を指し示す。この公園には、いくつかベンチが設置されているが、使っていたのは、砂場の向かい側にあるベンチ。少し年季が入っている。
「家でやらないのは親御さんがいるから?」
「ママとパパは仕事でいない。でも、登校前にはママがいるから外に出ないといけないからここにきた。でも、人がいなくて良かったからここで勉強してた」
「そうか。ごめんな、邪魔したみたいで」
「別にいいよ」
あまり人を受け入れないタイプだろうから、受け入れてくれて少し嬉しくなる。
「でも、来てないって連絡いってそうだよな」
「ママとパパはあんまり私に興味ないから」
その言葉だけは拒絶的な冷たさを帯びていた。こうしてサボったのは、勉強だけでなくて、親の気を引きたいという想いも込められているのだろうか。確かに、前に遊んだ時の理由は、鍵を忘れて連絡もつかなくて、帰ってくるまで俺の家で待っていたからだ。その事を母親に伝えても形式的な感謝だけで、子供を心配したりする様子はなかった。雪ちゃんにとって、少し家庭環境は良くないのかもしれない。
気の毒になるのと同時に、何かしてあげたいと思った。
「あのさ」
感情のままに話そうとする口に、理性が追い付きストップをかけた。
何かをしてあげたいとしても、俺に何が出きるというのか。家族関係を良くするなんて、出来るはずもないし、そもそも彼女がその関係性に、不満を持っているのか本当のことはわからない。それに、心を多少は開いてくれてるとはいえ、軽率に関わろうとすることを雪ちゃんに、宣言してもいいものなのか。というか、男子高校生が女子小学生と関わっていいのか。よくよく考えたら、この状況を端から見たら少し不味い気もするし。
そんな風に、頭の中でごちゃごちゃと思考が暴走。さっきは感情をぶつけようとしていたけど、躓いたせいで、その思いつきが薄れていく。
あーあ、もういいや。
「いや何でもない」
そう言葉にした時には、葛藤が薄れて、ふんわりとした感覚に包まれて体が少し重くなった。
「……お兄さんどうかした?」
「え」
「なんか辛そう。お兄さんは、嫌なことは逃げてくタイプだと思ってたんだけど。嫌になったらすぐ止めるって言ってたし」
「いや……まぁそうなんだけど」
辛そう。雪ちゃんの素直な言葉は、どんなものでもやはり胸に強く刻まれる。でも今回はすごく暖かくて柔らかく響いていき、そうして自分の感情に意識が向く。
考えるのを止めて、楽になっている気がしていた。けど、どうしてもさっきの雪ちゃんの表情が頭にあって。それを無視して、考えるのを止めた自分に対する失望もあって。考えれば考えるほど、苦しくなる。そして、このままなら、それはずっと続いていくのだと悟った。
「あーあ、もういいや」
上手くいかなくなるのは嫌だ。
でも、それで諦めてずっと後悔するのは、もっと苦しくて避けたい。
「あのさ、雪ちゃん」
俺は真っ直ぐ彼女を見た。
「なんか悩んでることがあったり、困ったりしてたら俺を頼ってよ。いや、何が出来るわけじゃないけど、話を聞くとか、多少は役に立てると思うからさ」
あまりに慣れないことを言ってしまい、顔を逸らしたい衝動に駆られるけど、抑え込んで向き合う。
雪ちゃんは見定めるかのように視線を注いでくる。
「あ、あの」
しばらく無言の状態が続いて、耐えきれなくなった。頬が熱い。
「……お兄さん顔赤いよ」
「なんか、外の温度が上がったかな」
「言い訳が下手」
ピシャリと指摘される。ですよね。
「その、やっぱり迷惑だったかな?」
「ええと、何て反応したらいいかわかんないけど」
俺が慎重に訪ねると、雪ちゃんは一泊置いてから話し出した。
「私は相談するとか頼るとかあんまり得意じゃない」
「う、うん」
やはり言うべきではなかっただろうか。嫌な展開を予測して予防線を張った。
「でも、そう言うことを言われたのは初めてで、その少しふわっとした気持ちになって」
雪ちゃんは、自身の気持ち探りながら身振り手振りで伝えようとする。
「だからその、迷惑とかじゃないよ」
気を遣ってくれているのか、最後の言葉を強調する。
「そ、そうか、ならいいんだけど」
良いのか悪いのかは燦然としない。恐らく彼女自身もわからないのかもしれない。
再び少し気まずい時間が流れると、十二時を示す鐘が聞こえてくる。
「……あの、お兄さん」
鐘の余韻がなくなったと同時に、雪ちゃんはおずおずと口火を切る。
「私、家にお母さんとかいなくて、お料理とかも出来なくて、お昼がない。だから、頼っていい?」
緊張した様子で、上目使いに頼ってくれる。それが、すごくいじらしくて、守って上げたいと思ってしまう。
「もちろん! 多少は料理できるし弁当もあるから」
「その、ありがと」
雪ちゃんは柔らかくはにかんだ。
「頼ってくれて嬉しいよ。これからも気楽に頼っていいからね」
「頑張ってみる」
「無理はしなくていいからね。困ったなーとか感じたらでいいから」
「勉強とかでもいい?」
「いいよ。多分恐らくきっと教えられると思う」
小学生ぐらいならきっと大丈夫なはずだ。大丈夫だよな? わからなければ調べればいい。
「なんかあやしい」
「まぁ、少し自信はないんだけどさ。でも、俺も安心して雪ちゃんが頼れるように、成長していくから。じゃ、家に行こう」
「うん」
この短い時間で雪ちゃんとの距離が一気に縮まった気がする。表情はあまり変わらないけど、少し柔らかくなっていると思う。
真上にある陽光は心地の良い暖かさで俺たちを満たしてくれている。
*
「いただきます」
俺は雪ちゃんからリクエストでカレーを作った。テーブルの上に置かれた食べ物を見て、食べようとする彼女の表情は変わらないが、声はすごく弾んでいる。
「美味しい」
「それは良かった」
スプーンを動かす手がすごく速く動いていて、どうやら口にあったようだ。
「お兄さんは食べないの?」
「食べるよ。でもその前に」
リビングを少し歩いて俺の部屋に入り、パズルの横にあるまだ飲みかけのペットボトルを取った。
「あれ」
取ろうと屈んだ時、裏返ったパズルのピースが落ちているのを発見する。
「こんなとこにあったのかよ」
位置的には俺が座っていた所で、少し立って足元を見れば見つかったはずだ。不思議なことに、探している時は見つからないのに、探すのを諦めたらすぐに見つけられることがままある。何かセンサーでもあるのだろうか。
「よしっ、完成」
俺は最後のピースを嵌め込みパズルを完成させた。すると、達成感と爽快感に満ちていく。やはり心残りがあったみたいだ。諦めて逃げるよりも頑張って向き合った方が、気分が良い。
「さぁて食べるか」
ドアを開ければ、リビングで黙々ともぐもぐしてる雪ちゃんの姿。椅子は少し高かったのか足をぶらぶらさせている。
「お兄さん?」
視線に気づいたのか、口の回りにカレーを付けた雪ちゃんと目があった。
「あーあ、もういいや」
そんな無邪気な様子に笑みが溢れてしまう。
俺には何かが足りていなかった。それは、なんなのかわからず、探しても簡単には見つけられなくて。けれどそれは意外にも近くにあったのかもしれない。
俺にとってのラストピースはぴったりとはまった、そんな気がした。
「最悪だ」
平日の午前十一時。本来なら高校に行っているはずの時間だが、適当な理由を言ってサボっている。
六畳半の俺の小さな城には、フローリングの床にシーツがごちゃごちゃしているベッドがあって、真向かいにずっと黒い画面のままのゲーム機が置かれた勉強机や、漫画が敷き詰められている本棚がある。床には、空のペットボトルや宅配のダンボールが乱雑に散らかっていた。部屋の真ん中には、緑色のカーペットが敷かれていて、現在俺はその上でパズルを作っている。
「どこにあんだ?」
いかんせん物が多数あるため、どこにピースがあるのかわからず捜索が難しい。ペットボトルをどけると、カラカラと音が響く。そして、床の上にあった埃が立つ。それだけで、目的のものは一向に姿を見せない。
「あーあ、もういいや」
少し探してすぐ諦めた。俺はカーペットの上で大の字で寝転ぶ。背中にはパズルの感触がした。
俺がパズルをやり出したのは、暇をもて余して子供の頃に使っていた引き出しを漁っていると、その中から偶然パズル見つけ、良い暇つぶしになると思ったから。そうしてやってみると、案外簡単に組み合わせられ熱中することができた。昔やったときは、すごく時間がかかり大変だったという印象があったのだが、これも時の流れだろうか。ただ、ピースが足りないと気づき、すぐにやる気を失ったのもまた今の俺だからこそ。時間は良くも悪くも人を変えてしまう。
「あー暇だ」
さっきまでの熱量は嘘だったかのようにやる気は消滅。無気力に天井を見つめる。
いつもそうだ。ちょっとでも上手く行かなくなるとすぐに嫌になってしまう。今日学校を休んだことも同じだ。
入学してから二ヶ月くらい経ち、人間関係はある程度固まってしまい、俺はどこの輪にも入ることができなくなった。勉強に関しても、序盤はついていけたが次第に置いてかれていき、やる気の炎は完全に鎮火。そんな状態になっても、しばらくはなんとか登校していたのだが、とうとう限界を迎え逃げ出したのだ。
伸ばした左手が、ぽつんと置かれたスクールバッグに当たる。中に手を入れて、ガサゴソと漁ると生徒手帳を掴んだ。中を開けると、真顔で少し睨んでいる表情になっている顔写真に、天宮晴という名前が書いてあり、生徒である証明をされている。この時間に私服姿でいる自分をそれに責められている気がして、すぐに放り投げた。
首を反らすと、窓ガラスの向こうの軽く手入れされていない、草木生い茂る庭が見えた。無邪気でエネルギッシュに、庭を走り回って遊んでいた小さな頃とは大違い。あのまま順当に成長したのなら、どうなっていたのだろう。別世界線の想像が膨らむ。まぁ、特に大きく変わったと思える出来事が、あったわけではないので、こうなることは確定していたのだろうが。
「歩きにでも行くか」
いつまでもぼーっとしているほど、忍耐力はない。それに、このまま何もしない状態でいると、罪悪感やらこの先の不安を考え出してしまいそうだ。この部屋のどんよりとした空気から逃げるべく、外に出ることにする。
クローゼットの引き出しから、適当に出した灰色のパーカーと灰色の長ズボン、学校の靴下を履く。バッグに付けていた鍵を取り出して、ポケットに入れ玄関へ。いつものように靴を履くと、つい癖でローファーに一度足を入れてしまう。そんな自分に苦笑しつつ、普段履きの靴に履き替えて、ドアを開ける。すると、少し冷えた新鮮な空気が流れ込み、肌をザラザラと撫でてくる。
「……まぶし」
太陽の眩しさにたじろぎつつ、歩き出す。家々が向き合った住宅街の道を進む。平日にこの時間を歩くこともないので、少し新鮮味がある。途中にT路地が現れ左に方向転換し、そこからしばらくすれば大きな道に出る。
その間にほとんど人にすれ違うことはない。俺が住むこの場所は、都会ではないが田舎でもない微妙な所だ。家々は立ち並んでいるが、遊ぶ場所やコンビニなどはほとんどない。あるのはちょっとした自然と大きな公園があるだけだ。
そんな地元をだらだらと散歩していく。風が吹くと、涼やかな葉音が鼓膜を心地よく揺らす。これからどこへ行こうかと思慮していると、ぱっと思いついたのは公園。
俺は車が通らない横断歩道を律儀に渡って、車止めの横をすり抜け、公園へと続く道に。そこから、数分もかからず広々とした、ほぼ人のいない公園が見えてくる。
「なんか、変わったな」
すごく近くにはあるのだが、ほとんど通らないため、すごく久しぶりだ。まず見えるのは、入り口付近にある砂場。その向こう側にある青色の滑り台なんかはリニューアルされていてた。しかし、その付近にあったはずのターザンロープは、なくなっていた。
公園に足を踏み入れようとすると、場違いな気がして抵抗感が押し寄せた。しかし、それを振り切って中へ。懐かしみながら進む。
「……あれは」
砂場の横を通り少し奥に進むと、ブランコを漕いでいる少女の姿がある。その子の顔には見覚えがあった。
「……」
無言で下を向いて、ブランコに揺られているのは、青山雪ちゃん。確か小学五年生だったはずだ。彼女とは、近所で顔が合えば挨拶を交わすし、何回か一緒にゲームをしたりして遊んだこともある。
「……あ」
彼女は、こちらに気づいたのか顔を上げると、真ん丸な黒い瞳が俺を見た。少し驚いたのか目をぱちくりしている。
「おっす」
「……こんにちは」
雪ちゃんは、大人びた口調で挨拶をして軽く会釈をすれば、可愛らしいツインテールがピョコンと跳ねた。
見た目とは裏腹にクールな性格をしていて、そのギャップがすごい。
「なーにしてんの?」
「別に……」
「ふーん、そっか」
俺は隣の空いているブランコに腰かけた。
「……お兄さんこそ何してるの」
「サボり」
「へー」
まるで興味ない返事が返ってくる。そこから反応はなく、無表情でブランコを揺らす。鉄の擦れるような音だけが、静寂の中で明瞭に木霊した。
「ええと。もしかして雪ちゃんもサボり?」
無言に耐えられず再び尋ねてしまう。
「……まぁそんな感じ」
相変わらずの態度だが、答えてくれて安堵。
「そうか、一緒か」
「一緒にしないでよ」
雪ちゃん漕ぐのを止めて、心外そうにむすっとした表情に。
「どーせお兄さんは、ただ面倒だからサボっただけでしょ。私はそんなのじゃないし」
「いやいや、もしかしたらなんか深刻な理由かもしんないじゃん」
「ううん。お兄さんはそういう人って知ってるし。そうでしょ?」
「……はい」
なぜかはっきりとそう断言してくる。確かにその通りではあるのだが、一応俺がサボったのは初めてだ。どうしてここまで自信に満ち溢れているのか。
雪ちゃんは隠そうとはしているのだろうけど、どうだと勝ち誇った笑みが見え隠れしている。
「じゃあ、雪ちゃんはどんな理由なの?」
「言う必要ある?」
「ないけど……俺は言ったからさ」
少し考えた後に、まぁいいかと小さく呟くと、理由を教えてくれた。
「理由は、学校に行く意味がないって思ったから」
「うんうん。意味って言うのは?」
「はぁ……学校って勉強する場所でしょ。なのに、みんな真面目に勉強しないで遊びのことばっか。それは勝手にすればいいけど、休み時間とか勉強してても周りはうるさいし、しかも邪魔してくるから最悪だし。他にもずっと勉強してるのがおかしいとか言ってくるし、先生も変な目で見てきてもっと人と関われって言うし。もう意味ない」
面倒くさそうに軽くため息をつきつつも意味について話してくれる。
「……なんかすごいな」
「すごくないよ」
思わず感心する。小学生なのにこんなことを考えれるなんて。
「そうかな? 俺が雪ちゃんくらいの頃なんて遊ぶことしか考えられなかったから、すげぇなって思ったよ」
あの頃は遊ぶことに夢中で、好きなことをとことんやっていた。今ではそんな力もないが。
「ふーん」
そっぽ向いて気のない返事をする。ただ、少し声が弾んでいるような気がした。
「お兄さんは何でサボったの? 私は答えたから答えてくれるよね」
「え? いや、なんか学校に馴染めなくてさ。なんか、上手くいかないから嫌になったんだよ」
「それだけ?」
「そんだけ」
少し驚いた様子を見せる。あまり感情を表に出さないタイプなので、珍しいものが見れたと得した気分になった。
「俺ってさ、少し上手くいなかないともう全て嫌になるんだよね。最近はそれがすごくなって、とうとうサボるに至った」
「……でも、上手くなるには上手くいかなくても、頑張らないといけないでしょ? それっておかしくない?」
「……そ、そうなんですけど」
純粋な言葉の刃が胸にクリティカルヒット。発した本人は、よくわからなさそうに首を傾げている。
「……大人って矛盾したことばっか」
吐き捨てるように言い放つ。大人にフラストレーションをためているようだ。しかし、それよりも否定しなくてはならないことがある。
「あの、一応高校生なので子供なんすけど」
「私からみたら高校生は大人」
「そ、そうっすね」
そういえば小さな頃、同じように高校生はとても大きくて、大人のように感じていた。しかし、俺と比べると、雪ちゃんの方が大人びているような気がしなくもない。
「えっと、大人は好きじゃない感じ?」
「好きでも嫌いでもない」
「じゃあ、俺は?」
「え……」
なんだか引いたような表情に変わる。
「いや、何でもないです。すみません」
血の気が引いて危機感を察知。すぐさま撤回した。心なしか距離が離れた気がする。
「そ、それにしても雪ちゃんはしっかりしてるなー」
「すごい話の逸らしかた」
冷たい声のトーンと視線が突き刺さる。
「はは、いやーそんなことは……ないっすけどー。あ、ところでブランコって……いいよね。なんか揺れるし」
精神がアラートによって、かき乱されわけのわからないことしか言えず、もうブランコを漕ぐしか道はなかった。
「……ふふっ。なんかお兄さんってすごく子供っぽいよね」
雪ちゃんが控えめに微笑む。それはまるで雪解け。輝くような純粋な表情はとても可愛らしくて。
それをみた瞬間に安堵が胸いっぱいに広がる。まじで助かった。
「そ、そうかな? 雪ちゃんは大人っぽいよな」
「ううん、全然。それに大人にはなりたくないし」
純真な瞳がどこか遠くを見つめる。視線の先には緑色の芝生が広がっていた。
「その気持ちはわかるな。俺もなりたくない」
「お兄さんは心配しなくても大丈夫だと思うけど」
「え、それって褒められてる? なんか馬鹿にされてない?」
「ふふっ」
すごく馬鹿にされている気がするが、雪ちゃんの微笑みで悪い気分は吹き飛ぶ。
この短時間で、どん底の気分から一気に有頂天まで登ったりして、感情がジェットコースター状態だ。疑似吊り橋効果で、雪ちゃんに対する好感度がストップ高になっている。もちろんロリコン的な好きではないが。
もしかすると、大人になればすごく魔性の女性になるかもしれない。恐ろしい子だ。
少し周囲を見てみると、人気はやはり少なく、公園の周辺の道を歩く老人の姿がちらほら見かけるだけで、二人だけの静寂は変わらない。それにどこか安心感を得ている、自分がいるのを密かに感じていた。
「そういえば、雪ちゃんはここで何をしていたの?」
「勉強してた」
「ここで?」
「ううん。向こうのベンチで。今は休憩してた」
小さな指で左側を指し示す。この公園には、いくつかベンチが設置されているが、使っていたのは、砂場の向かい側にあるベンチ。少し年季が入っている。
「家でやらないのは親御さんがいるから?」
「ママとパパは仕事でいない。でも、登校前にはママがいるから外に出ないといけないからここにきた。でも、人がいなくて良かったからここで勉強してた」
「そうか。ごめんな、邪魔したみたいで」
「別にいいよ」
あまり人を受け入れないタイプだろうから、受け入れてくれて少し嬉しくなる。
「でも、来てないって連絡いってそうだよな」
「ママとパパはあんまり私に興味ないから」
その言葉だけは拒絶的な冷たさを帯びていた。こうしてサボったのは、勉強だけでなくて、親の気を引きたいという想いも込められているのだろうか。確かに、前に遊んだ時の理由は、鍵を忘れて連絡もつかなくて、帰ってくるまで俺の家で待っていたからだ。その事を母親に伝えても形式的な感謝だけで、子供を心配したりする様子はなかった。雪ちゃんにとって、少し家庭環境は良くないのかもしれない。
気の毒になるのと同時に、何かしてあげたいと思った。
「あのさ」
感情のままに話そうとする口に、理性が追い付きストップをかけた。
何かをしてあげたいとしても、俺に何が出きるというのか。家族関係を良くするなんて、出来るはずもないし、そもそも彼女がその関係性に、不満を持っているのか本当のことはわからない。それに、心を多少は開いてくれてるとはいえ、軽率に関わろうとすることを雪ちゃんに、宣言してもいいものなのか。というか、男子高校生が女子小学生と関わっていいのか。よくよく考えたら、この状況を端から見たら少し不味い気もするし。
そんな風に、頭の中でごちゃごちゃと思考が暴走。さっきは感情をぶつけようとしていたけど、躓いたせいで、その思いつきが薄れていく。
あーあ、もういいや。
「いや何でもない」
そう言葉にした時には、葛藤が薄れて、ふんわりとした感覚に包まれて体が少し重くなった。
「……お兄さんどうかした?」
「え」
「なんか辛そう。お兄さんは、嫌なことは逃げてくタイプだと思ってたんだけど。嫌になったらすぐ止めるって言ってたし」
「いや……まぁそうなんだけど」
辛そう。雪ちゃんの素直な言葉は、どんなものでもやはり胸に強く刻まれる。でも今回はすごく暖かくて柔らかく響いていき、そうして自分の感情に意識が向く。
考えるのを止めて、楽になっている気がしていた。けど、どうしてもさっきの雪ちゃんの表情が頭にあって。それを無視して、考えるのを止めた自分に対する失望もあって。考えれば考えるほど、苦しくなる。そして、このままなら、それはずっと続いていくのだと悟った。
「あーあ、もういいや」
上手くいかなくなるのは嫌だ。
でも、それで諦めてずっと後悔するのは、もっと苦しくて避けたい。
「あのさ、雪ちゃん」
俺は真っ直ぐ彼女を見た。
「なんか悩んでることがあったり、困ったりしてたら俺を頼ってよ。いや、何が出来るわけじゃないけど、話を聞くとか、多少は役に立てると思うからさ」
あまりに慣れないことを言ってしまい、顔を逸らしたい衝動に駆られるけど、抑え込んで向き合う。
雪ちゃんは見定めるかのように視線を注いでくる。
「あ、あの」
しばらく無言の状態が続いて、耐えきれなくなった。頬が熱い。
「……お兄さん顔赤いよ」
「なんか、外の温度が上がったかな」
「言い訳が下手」
ピシャリと指摘される。ですよね。
「その、やっぱり迷惑だったかな?」
「ええと、何て反応したらいいかわかんないけど」
俺が慎重に訪ねると、雪ちゃんは一泊置いてから話し出した。
「私は相談するとか頼るとかあんまり得意じゃない」
「う、うん」
やはり言うべきではなかっただろうか。嫌な展開を予測して予防線を張った。
「でも、そう言うことを言われたのは初めてで、その少しふわっとした気持ちになって」
雪ちゃんは、自身の気持ち探りながら身振り手振りで伝えようとする。
「だからその、迷惑とかじゃないよ」
気を遣ってくれているのか、最後の言葉を強調する。
「そ、そうか、ならいいんだけど」
良いのか悪いのかは燦然としない。恐らく彼女自身もわからないのかもしれない。
再び少し気まずい時間が流れると、十二時を示す鐘が聞こえてくる。
「……あの、お兄さん」
鐘の余韻がなくなったと同時に、雪ちゃんはおずおずと口火を切る。
「私、家にお母さんとかいなくて、お料理とかも出来なくて、お昼がない。だから、頼っていい?」
緊張した様子で、上目使いに頼ってくれる。それが、すごくいじらしくて、守って上げたいと思ってしまう。
「もちろん! 多少は料理できるし弁当もあるから」
「その、ありがと」
雪ちゃんは柔らかくはにかんだ。
「頼ってくれて嬉しいよ。これからも気楽に頼っていいからね」
「頑張ってみる」
「無理はしなくていいからね。困ったなーとか感じたらでいいから」
「勉強とかでもいい?」
「いいよ。多分恐らくきっと教えられると思う」
小学生ぐらいならきっと大丈夫なはずだ。大丈夫だよな? わからなければ調べればいい。
「なんかあやしい」
「まぁ、少し自信はないんだけどさ。でも、俺も安心して雪ちゃんが頼れるように、成長していくから。じゃ、家に行こう」
「うん」
この短い時間で雪ちゃんとの距離が一気に縮まった気がする。表情はあまり変わらないけど、少し柔らかくなっていると思う。
真上にある陽光は心地の良い暖かさで俺たちを満たしてくれている。
*
「いただきます」
俺は雪ちゃんからリクエストでカレーを作った。テーブルの上に置かれた食べ物を見て、食べようとする彼女の表情は変わらないが、声はすごく弾んでいる。
「美味しい」
「それは良かった」
スプーンを動かす手がすごく速く動いていて、どうやら口にあったようだ。
「お兄さんは食べないの?」
「食べるよ。でもその前に」
リビングを少し歩いて俺の部屋に入り、パズルの横にあるまだ飲みかけのペットボトルを取った。
「あれ」
取ろうと屈んだ時、裏返ったパズルのピースが落ちているのを発見する。
「こんなとこにあったのかよ」
位置的には俺が座っていた所で、少し立って足元を見れば見つかったはずだ。不思議なことに、探している時は見つからないのに、探すのを諦めたらすぐに見つけられることがままある。何かセンサーでもあるのだろうか。
「よしっ、完成」
俺は最後のピースを嵌め込みパズルを完成させた。すると、達成感と爽快感に満ちていく。やはり心残りがあったみたいだ。諦めて逃げるよりも頑張って向き合った方が、気分が良い。
「さぁて食べるか」
ドアを開ければ、リビングで黙々ともぐもぐしてる雪ちゃんの姿。椅子は少し高かったのか足をぶらぶらさせている。
「お兄さん?」
視線に気づいたのか、口の回りにカレーを付けた雪ちゃんと目があった。
「あーあ、もういいや」
そんな無邪気な様子に笑みが溢れてしまう。
俺には何かが足りていなかった。それは、なんなのかわからず、探しても簡単には見つけられなくて。けれどそれは意外にも近くにあったのかもしれない。
俺にとってのラストピースはぴったりとはまった、そんな気がした。