桜並木に着けば、嬉しそうに美来が携帯で写真を撮っている。

「七海ー!ほら、早くおいでよ!こっち側の桜もとっても綺麗だよ!」
「はいはい」

 元気な美来に連れ回されるのは、高校の時から嫌いじゃなかった。

「ていうか美来、携帯持ってるなら、事前に連絡くれたら良かったのに!」
「それはごめん。でもね、地元で桜を見たら、急に会いたくなっちゃったの。去年の約束も桜を見たら思い出したの!」

「あんな約束……」と口走ってしまった私に、美来は食い気味で返事をした。


「そう、あんな約束!ただの口約束。でもね、お陰で七海に会いに行こうって思えた。七海に会える回数が一回増えた。だから、一回分得しちゃった!」


 そう言って笑う美来の姿が去年と重なり、何故か少しだけ泣きそうだった。


「ねぇ、七海。私、思うの。生活が変われば、会う人も変わる。当たり前のこと。寂しいけれど、仕方ないこと。それでもね……」


 美来が私に駆け寄ってくる。


「きっと縁なんて、思ったより単純なんだよ!大好きだから、また会いたいって思う!私は馬鹿だから、それだけでいいやって思っちゃった!」

「それに、大人になれば、きっともっと忙しくて会えなくなる。もしかしたら、連絡すら取らないかもしれない。でもね、それでもいいの。だって、『今』がとっても楽しいから!」


 美来が桜を見上げる。そして、私と目を合わせた。


「うん!やっぱり、七海は桜が似合う!」


 縁が切れても今が楽しいから気にしないという美来と、ずっと友達でいたいと願った私は、これからも会うのだろう。


「ねぇ、美来。じゃあ、来年の約束はしなくていいの?」
「しない!だって、春が来る前にまた会うでしょ?その時に、約束しよ!」


 次は紫陽花《あじさい》でも一緒に見に行こうか。


fin.