高校三年生、卒業式が終わり、大学生活が始まろうとしていた。高校三年間同じクラスだった友達の美来《みく》と桜を見に出かけた。
 ふわふわと桜の花びらが舞い、視界がピンク色に染まる。ピンク色の世界には、美来の長いストレートの黒髪がさらに際立って感じた。

「七海《ななみ》!来年も一緒にお花見に行こうね!」

 よくある約束。大学生活が始まれば、忘れてしまうような約束。悲しいけれど、きっとそういうもの。だって美来は県内の大学、私は県外の大学に行く。
 「うん!」と頷いた記憶すら薄れた頃、次の春がやって来る。