目で追う文字が滲んで、最後まで読めなかった。手紙の返事をもらえるなんて、思いもしなかったから、手が震えている。
 夢の中にでもいるようで、実感が湧き始めたのは、三週目に読んだあたりから。

 宮凪くん、ありがとう。空からのメッセージ、宝物にするね。

 手紙を戻そうと封筒を手にして、他になにか入っていることに気づく。コロンと出てきたのは、スマホ用のUSBだ。

 なんだろう。
 緊張しながら、私は自分のスマホにUSBを差し込んだ。ファイルが出てきて、ひとつだけ入っているデータをそっと開く。


 タイトルは、【モノクロームと恋蛍】


 胸に響く伴奏が流れてきて、聞き覚えのあるメロディへと繋がっていく。Aメロの歌い出しが聞こえた瞬間、心臓がぐらついた。

 ──宮凪くんの声だ。


 偶然見つけたメッセージ
 「友達になろう」の文字が
 ひとつずつ浮かんでわたしの心
 一瞬で貫いた

 いつも一人だった
 寂しくないと言い聞かせて
 殻に閉じこもったの
 初めて知る青い宝石に触れて

 煌めく未来を夢みて瞼開いた
 星屑のような光が
 二人を包んで羽ばたき出す
 あの日の僕らを連れ出してく


 宮凪くんとの日々を思い出して、目頭が熱くなと。私の考えた歌詞に、宮凪くんによって命が吹き込まれている。
 心に響く懐かしい声を、何度も繰り返し聞く。メロディは続いているのに、二番に歌は入っていない。
 大サビが終わり、最後の音が流れ終わった。宮凪くん、すごいよ。ちゃんと、完成させたんだね。
 あとは、私の歌詞が足りなかったから、声を入れられなかったんだ。

 音源データをスマホアプリへ保存して、私は自分の部屋へ駆け上がる。
 これまで保管してあったメッセージの上に、新しく手紙が増えた。宮凪くんからの、ラストレター。
 いつも使っていたパステルブルーの便箋を取り出して、私もペンを握る。奇跡の手紙に、返事を書くため。