伊波くんとも、一ヶ月に一度会っている。宮凪くんのお墓参りへ訪れるため。真木さんも付き添ってくれて、心強い。
 行きがけにある花屋さんで菊とリンドウにカスミソウを添えてもらい、私たちは長い石の道を登る。丘の上にあるお墓へ手を合わせ、想いを馳せた。

 気持ちの良い風が吹いて、ろうそくの炎を揺らす。あの日、二人で見た病室のアクアリウムを思い出して懐かしくなった。

「海、また今度来るからな。そのときは、違う話聞かせてやるから。待ってろよ!」

 鼻をぐずぐずとすする伊波くんの背中を、真木さんがバシッと叩く。クスクスと笑いながら、私はもう一度瞼を閉じた。

 お葬式には出られなくて、ごめんなさい。
 ここへ来て、ようやく宮凪くんが旅立ったことを受け入れられた気がする。

 丘を降りていると、後ろから小走りで来た伊波くんが私の隣へ並んだ。なにか言いたげな目をしているなと思ったら。

「蛍ちゃん、今度映画でも見に行かない?」

 パチパチと瞬きをして、数秒思考が停止する。

「……え? それって、三人で……ですか?」
「あ、うーんと、いや」
「とーぜん、私も入ってるよねー?」

 少し前を歩いていた真木さんの威圧的な表情に、伊波くんは怯えた様子で。

「えっ、ええ! そ、そうそう! もっちろん、三人……で!」
「ならばよし! 蛍に指一本でも触れてみな? へし折るからね」
「それだけは勘弁してください!」

 すっかり真木さんの尻に敷かれている伊波くんだけど、三人でいるときは思いのほか心地良い。
 二人のやりとりで笑って、最後にはみんなから笑い声が上がっている。

 宮凪くん、見てくれていますか?
 人見知りで臆病な春原蛍は、あなたと出会って変わりました。誰かと関わる大変さ、誰かを想う喜びを知りました。

 でも、やっぱり心にはぽっかり穴が空いていて、とてつもなく寂しくなります。宮凪くんに会いたくなって、一人になると、ふいに涙が出ます。

 もっと言葉にしていたら、伝えていたら……と、何度もあの日々を思い返しています。