宮凪くんの葬儀が終わって、三日が経った。
 伊波くんから線香をあげに行ったと聞いたけど、私は当分行けそうにない。
 明日から学校が始まるというのに、心はどこかに置き去りのままだ。

 残されている『ウミノホタル』のページを開くと、宮凪くんに会える。でも──。


 会いたい。


 亡くなる前日の投稿で、時は止まっている。それを見る度に、止めどなく涙があふれて動けない。

 宮凪くん、私も会いたい。
 もう一度、話したいよ。

 二人で過ごした日々を思い出す。私の詩に、初めてメッセージをくれたこと。一緒に水族館へ行ったこと。放課後、公園の海賊船の中で夕焼けを見たこと。病室で曲を考えたこと。屋上から、花火を見たこと。
 蘇るたび、胸が苦しくて、動けなくなる。

 布団にくるまりながら、『ウミホタル』のアカウントを何度もスクロールした。涙で滲んで、ぼやけた画面しか映らない。

 ああ……、宮凪くんは、もう、いないんだ──。


 新学期が始まって、塞ぎ込む日々が続いた。もう一週間、学校へ行っていない。真木さんからのメッセージも読めなくて、ベッドから出られないでいた。
 生きる気力が薄れて、何もやる気が湧かない。
 スマホが鳴って、ぼんやりと目を向ける。宮凪空の名前に飛び起きて、ベッドの枠でかかとを強打した。


「いっ……」

 悶えてうずくまると、床に置いたスマホの画面に文字が浮かぶ。

【海の遺品を整理していたら、たくさんの手紙が出てきました。きっと、あの子にとって春原さんは心の拠り所だったのだと思います。本当にありがとう】

 体中の水分が枯れるほど泣き通したはずなのに、ほろりと涙がこぼれ落ちた。
 宮凪くんとの手紙は、全て保管してある。宮凪くんも、取ってくれていた。その事実に、少し救われた気がする。