「初めてましてー! 伊波です」

 訪ねてきたのは、黒髪が爽やかな男の子。可愛らしい顔をくしゃっとさせる彼は、天王(てんのう)高校の一年生で、宮凪くんの友達……だったらしい。

 ──イナミとは仲直りしときたかったな。

 宮凪くんのつぶやいていた言葉が気になって、空さんへ確認した。小学生の時に親友だった子と、ちょっとした事情で今は疎遠になっていると教えてもらった。

「いや~、春原さんとは何回かやりとりしたけど、まさか友達の家に来ることになるとは。女子二人に囲まれて、すげぇ緊張する」
「そんな風には見えないけど。うちよく分かったね。一回来たことある春原さんでさえ迷ったらしいけど」

 真木さん……、それは恥ずかしいから、なるべく秘密にしておいてほしかった。

「余裕っすよ。何件か表札ガン見して、不審者に間違われたけどね」

 テンポよく飛び交う会話に、相槌すら打てなくて一歩後ろへ下がってしまう。真木さんがいてくれて、心底安心した。私一人では、間が持たなかっただろう。

「で、頼まれてた寄せ書きと、ついでにオレも三個折って来た」

 真木さんと伊波くんにだけ、蛍病の話をした。言っていいのかとても悩んだけど、伝えているのといないのでは、このイベントが成功するかどうかを大きく左右すると思ったから。

 隙間なくぎっしりと書き込まれた色紙とテーブルに置かれた折り紙に、真木さんとひしと抱き締め合う。
 早く宮凪くんに見てほしくて、うずうずしている。