「はーい! じゃあ、わたしやるよ」

 空気を壊す太陽みたいな声に、周りがざわつき始める。

「えっ、イチカそれ本気で言ってるの?」
「折り紙って? なんのために? いきなり訳わかんないお願いされて、いいよーって協力なんかできなくない?」

 私へ向けられていた視線が、颯爽と教卓の前に立つ真木さんへ変わった。

「友達のために、折り紙折ってほしいんだって。理由なんてそれだけじゃん」
「なにそれ」

「それにさ、人見知りな春原さんが、こんな必死に頼んでるんだよ? よっぽど大事なことなんだよ」
「そんなの知らないし。だって、うちらになんかメリットあるの?」

 そうだよと数人のクラスメイトが、唇を尖らせる。不満を口にしているのが真木さんと仲よくしている子たちで、胸の奥が締め付けられた。
 私のせいで、仲間割れしてしまったら……。

「いいじゃん。それで誰かが喜んでくれるなら。自分がされたら嬉しいし、わたしはその数分、無駄だとは思わないけどね」

 あっけらかんとした真木さんに、ぐうの音も出ないという感じで、その子たちは黙り込む。

「……たしかに。何枚でもいいなら。私たちも、できるかな」
「勉強や習い事もあるから、支障ない程度だったら大丈夫だよね」

 ちらほらと、他から小さな声が上がり始めた。行事などでは、いつも目立つ人の後ろに隠れている子たちだ。その勇気に続けて、わたしもやるよと、何人かが名乗り出てくれた。

「……ありがとうございます。ほんとに、ありがとう」

 深く頭を下げて、用意していた折り紙を配る。
 初めは無理かもしれないと弱気だった。私に出来るわけないと決めつけて。

 けれど最終的に、クラスの半数ほどの人が協力してくれることになった。
 戻っていく真木さんが、すれ違いざまに背中を押してにこりとする。いつも酸素の薄い教室が、少しだけ息がしやすく感じた。